月初恒例の「米国雇用統計」が発表されましたが、結果を受けてドル円は一瞬売られる動きとなり、大きく跳ねて115円を超えるような結果とはなりませんでした。
イタリアの国民投票を控えているせいもありますが、意外におとなしい動きとなってしまいました。
強弱とりまぜた結果なるも12月利上げは確定的
米労働省が発表した「米雇用統計」で失業率は4.6%と、予想外に10月4.9%から低下し2007年8月来の低水準となりました。また非農業部門雇用者数は前月比+17.8万人と市場予想にほぼ一致したものの、10月分は+14.2万人へ+16.1万人から下方修正されたことが嫌気さらた部分もあったようです。
平均時給は前月比‐0.1%と、予想外に2014年12月以来のマイナスに落ち込み、前年比でみても+2.5%と、予想外に10月2.8%から低下し8月来の低水準となったことが嫌気されたようです。
ただし、この数字は決定的に悪化したものではありませんから、基本的に12月の利上げは間違いなく行われることになるものと思われます。結果発表を受けてドル円は売り込まれましたが、113円台中盤にはかなりの買いが待ち構えていたようで、上がりもしないものの下がりもしない相場がつづきました。
東京タイムに利益確定が持ち込まれるドル円
この一週間の動きを見ていますと、月曜日には米系ファンドと思われる大玉が東京タイムに持ち込まれてドル円は大きく下落することとなりました。
金曜日も本邦系の機関投資家から売りが持ち込まれたようで、やはり流動性の高い東京タイムに大きな金額でのドル売り円買いが持ち込まれることが多いことがわかります。
一方朝8時台や「London Fix」となる午前1時すぎには米系ファンドと見られる暴力的な買いも見受けられるようになっており、一部ファンドは依然としてドル円の買い上げに力を入れていることがわかります。
さすがに今週は115円台に突き抜けることはありませんでしたが、イタリアの国民投票後に正常さを取り戻せばもう一段上を狙いに行くことはほぼ間違いないようで、こうした買い上げの動きが「FOMC」で一息つくのか、さらにクリスマスまで継続されるのかによって到達レベルもかなり異なるものになりそうです。
これまで「雇用統計」の結果は米国の利上げに非常に大きな影響を及ぼすものだっただけに結果を受けた相場は大きく走ることが多かったのですが、ある意味ではかなり地味なものになりつつあることがわかります。
FOMC後の結果も気になるところ
14日の「FOMC」はもはや利上げは確定的な状況で、逆に利上げをしないことが相場に混乱をもたらしそうな気配ですが、新興国の通貨は軒並み下落しており、「FRB」がほとんど気にしなくなっている他国の状況から「リスクオフ」に火がつく可能性についてはかなり注意深く見ておく必要がありそうです。
また米国債の金利は相変わらず上昇を続けており、すでに「FRB」の利上げサイクルを先回りするような勢いで上昇しているだけに、ここからの「イエレン議長」の利上げに対する采配の力量は求められることになりそうです。
すでに「FRB」の利上げは後手にまわっていますが、どのぐらいのタイミングで継続した利上げを行えるのかが明確にならないと、もはや中央銀行として市場をリードしていくことができなくなり危険性も高まっています。
「FOMC」のたびに委員が投票して開示するドットチャートは当たらないことでも有名ですが、こうしたいい加減な内容を開示するのでは市場が納得しない状況になりつつあります。
さらにトランプ政権の政策との整合性をどのようにとってくるかも大きな課題であり、圧縮経済などと言っていられるのかについても市場の関心が高まることになりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)