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いよいよ11月8日の大統領選挙が近づいていますが、為替市場にはほとんど影響を与えなくなっているようで、もはや勝負あったという織り込みをしているのかも知れません。
ところで金融市場ではどちらの候補が勝っても2017年は大幅な財政出動が見込めるのではないかという楽観的な見通しが高まっているようで、これが世界的に金利を高めているのではないかといった見かたが強まっています。
ガンドラックも早々に同様の内容を指摘
ヒラリークリントンは「ニューディール政策」の実施を公約の中に入れていますし、ドナルド・トランプのほうもかなり大規模な財政政策を示唆していますので、どちらの候補が当選しても2017年からは米国は大掛かりな財政政策を打ち出すことはほぼ間違いない状況になりつつあります。
女性へのセクハラやメール問題ばかりが前面に出てしまっていますが、金融市場はこうした部分に敏感に反応していることが窺われます。
9月に来日して講演を行ったダブルラインキャピタルの「ジェフリー・ガンドラック」も同様の内容をいち早く口にしており、日本と欧州における「マイナス金利政策」の失敗を教訓に、政策の軸足が金融から財政にシフトしようとしているのを市場の一部がいち早く察知したと指摘しています。
米国で本格的に財政出動が語られるのは春先か
ただ、新たな大統領が就任するのは1月中盤からですから、こうした具体的な政策が公表されて議論されるのはそれ以降ということで、11月8日の決定ですぐにドルが財政出動期待から上昇すると見るのはさすがに拙速すぎることになります。
ただし、たとえば12月15日に「FOMC」が利上げを実施して株も為替も相場が崩れた場合には、いい買い場を提供してくれることになりますし、また新大統領が就任前から積極的な財政出動を口にすることとなれば、米国の利上げでも相場は大きく崩れない可能性も出てきているわけです。
問題は米国政府がどこまでのドル高を容認するか
今年に入ってから度々、ルー財務長官はドル高に対するけん制を行っていますが、こうした本格的な財政出動が登場した場合、通常は自国通貨は上昇するのが常になりますので、果たして米国がどこまでのドル高を容認することになるのかにも注目が集まります。
今のところ簡単に「金融緩和」に対して出口戦略の持ち出せる状況ではないことは間違いありませんが、「ECB」はなんらかの出口戦略を履行することができたとしても、日銀にはまったく出口を考える余地がないのもまた事実です。
米国を中心とした主要国の「金融政策」が緩和から財政出動主体へとシフトしたときに、一体日銀がどのように対処するかによっても、ドル円の動きは大きく異なるものとなることが予想されます。
足もとの状況からどのようにドル高に繋がるのかが大きな問題
来年のことを言うと鬼が笑うといいますが、もうあと2ヶ月あまりで2017年になろうとしてはいるものの、この11月、12月の相場が果たしてどのように展開して2017年につながっていくことになるのかは依然としてかなり不透明感がある事は事実です。
来年の春先以降ドル高が示現するとしても、果たしてここからそこまでどうシナリオがつながっていくことになるのかが大きな問題であり、まずは大統領選挙が終わってみませんと、その目処が立たない状況にあるといえます。
世界最大の「ヘッジファンド」で今年も業界全体が不振の中で大きく利益を伸ばしている、ブリッジウォーターアソシエイツの「レイ・ダリオ」は、世界経済が減速しそうなのは間違いなく、現在、リスクは圧倒的にダウンサイドにあり、混乱の引き金を引きかねない利上げをすべきではないとの警鐘を鳴らし続けています。
2017年を前にして「FRB」が利上げを行うことで、市場が昨年同様に大混乱になった場合には、上昇よりも下落を気にする必要があり、売買戦略の構築もかなり難しくなりそうです。
（この記事を書いた人：今市太郎）
