7日日本時間の未明、朝3時に公表された「FOMC」の6月議事録を受けて市場では年内の利上げ観測がさらに遠のきつつあり、ドル円の上昇材料がまたひとつ減る形になっています。
内容はハト派的なものだが利上げの可能性も残す
Photo Market Watch
6月の「FOMC」議事要旨によりますと、政策議論に参加した「FRB」の政策決定者の多くが、米国の「雇用統計」の悪化による急減速は統計上のノイズの可能性があると強調しており、大半は金融や経済にショックが起きて米国が軌道を外れるようなことさえなければ、利上げしても米経済は大丈夫だろうと主張していることがわかりました。
しかし「BREXIT」の投票前ということもあり、やはり様子をみることが最善の策であるとしてかなり慎重な姿勢もうかがわせる内容となっています。
市場はすでに年内利上げなしと判断
毎度ご紹介しております「CME」のFedWatchでは年内の利上げは殆どないと織り込まれ始めており、またしても利下げの確率すら示現するようになってきているところが興味深いところです。
かろうじて12月に「13.2%」の確率がでていますが、ほとんど主流は現行維持と見込んでいるようで、特に7月と9月は全く可能性なしと見られているところが注目されます。
ただ今週末に発表となる「雇用統計」で前月発表分が大幅に修正されるなどの動きがでれば、また多少は利上げの可能性が高まることも予想されるため、この数字の発表にはあらためて市場の関心が集まりそうです。
米国年内利上げなしとなると市場の新たなテーマ探しが問題
「UK」のEU離脱問題は9月9日まで最低限でも動かないことがわかっていますので、これで米国の利上げも完全に後ずれ観測が強くなると、為替市場をこの夏に動かすテーマが一体何になるのかが大きな問題となってきます。
BREXIT問題以降、UKのFT100株価はアウトパフォームに転換するなど意外な動きをみせていますが、その中でも欧州の銀行株が軒並み株価を下げており、中でもイタリアの「モンテ・パスキ」は本格的に国による資金投入が必要な状態に陥っている状況です。
最近「IMF」が金融システム安定化レポートを発表していますが、この中で実名入りで「ドイツ銀行」、HSBC,クレディスイスのリスクが具体的に指摘されており、中でも「ドイツ銀行」に関してはそのリスクが世界の28行に伝染する可能性すら指摘されていることから、市場では大きな関心を呼ぶようになっています。
今のところ、大きな動きにはなっていませんが、テールリスクとしては中国起因の問題よりもこの欧州銀行の破綻騒ぎが暴落の大きな引き金を引く可能性はかなり高くなってきていると思われます。
とりわけ「ドイツ銀行」についてはデリバティブ取引の額が数千兆円を超えており、一説にはドイツの「GDP」をはるかに超えるとも噂されることから、万が一破綻となれば「ECB」にもドイツ政府にも事実上救済不能となることはほぼ間違いないと考えられています。
民間銀行の破綻ですから「中央銀行」バブルの崩壊に比べればまだマシではありますが、その規模感は「リーマンショック」の比ではないことはあらかじめ十分に認識しておきたいところで「IMF」が臆面もなく実名で「ドイツ銀行」のことを指摘していることが非常に気になるところです。
ここ数日の「UK」の不動産ファンドの解約停止騒動もBREXITの問題とはされていますが、金融市場全般に暗い影を落とし始めており、これを契機にしてEUの金融機関全体に不安が広がる可能性が危惧されるところです。
金融危機というのは破綻してみて、はじめて何が起こっていたのかわかることが多く、当座はパニックだけが先行するものですが、どうもこの夏ユーロ圏の金融危機の再燃は市場暴落の大きな引き金になりそうで注意が必要です。
株も為替も高値で戻り売りをしてそのまま保有していると思わぬ利益が転がり込んでくるかもしれない夏のはじまりです。
(この記事を書いた人:今市太郎)