「伊勢志摩サミット」も終わり、27日のNY市場は日本時間の28日2時過ぎから行われたハーバード大学での「イエレン議長」の講演の中身に注目が集まることとなりました。
その一方で「生産性の伸びは非常に緩い。過度に急激な利上げに慎重を期すべき」とも述べており、連続利上げを積極的に進めて行くことには慎重さもうかがわれ、なかなか判断の難しいところとなっています。
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ガンドラックはイエレン発言6月利上げを示唆せずと解釈
この発言を受けて、新債券の帝王の異名をもつダブルラインキャピタルのCIOで「ジェフリー・ガンドラック」は今後数カ月での利上げが適切とのイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の発言について、6月利上げは示唆していないとの考えを示しています。
ただ、市場は米国株価がこの「イエレン」発言を受けて値を削る形となっており、利上げが近いと市場は受け取っているようです。
利上げは株価次第の状況に
「FRB」も日銀も口が裂けても言わない話ですが、彼らは明らかに株価を見て「金融政策」を判断しており、米国の場合の足もとの株価の安定は原油価格がかなりサポートしていることに起因していると思われます。
したがって、この夏にむけて株価が安定して、「FRB」の利上げを織り込んでいくことになれば、6月はないとしても7月に利上げが起こる可能性はまだ十分に残されているということができそうです。
ただし、原油価格のおかげでエネルギー系の株価が高値維持した以外には、自社株買いが米国の株価を支えているだけで、市場全体とした堅調であるわけではないところが危惧されており、手放しで利上げを受け入れられるかどうかは引き続き慎重な判断が要求される相場になっていることもまた事実です。
3日の雇用統計にも再注目
週明けは3日に早くも5月の「雇用統計」の発表があり、ここで賃金の上昇関連の指標がさらに改善することになれば、一層利上げのタイミングを早めることが考えられます。
現時点では、毎回ご紹介しています「CME」の「FedWatch」も6月利上げの確率を30%に維持したままですから急激にその数値は上昇していない状況ですが、万が一6月に利上げが行われた場合には、米国側からの要請もあって日銀はその直後の6月の「金融政策決定会合」で追加緩和をする可能性が高まることになりそうです。
直近の英国における世論調査では、EU離脱になった場合のデメリットに対する英国政府のネガティブキャンペーンと思われる情報開示がかなり広範に進んでいることから、これまで態度保留としていた国民の多くが反対に回るようになっており、離脱の可能性は低下傾向にあり、ポンドもそれを受けて大きく買い戻されることになっています。
6月の利上げはこうしたことも後押しを受けることになり、まったく可能性がないわけではないことを示唆しているといえます。
トランプ氏の大統領就任の可能性もFRBに微妙な影響
足もとでは「トランプ氏」が7月の共和党大会を待たずに、共和党大統領候補の座を確保することとなっていることも各地区連銀総裁の発言に影響を与えていると言われています。
大統領選挙はこの先どうなるかわからなくなってきていますので、とにかくその前に選挙に影響を与えないタイミングで利上げだけは、してしまいたいという微妙な意思がここへきて急激に利上げの可能性を高める形になっているようです。
それぞれ個別に動いているエレメントが微妙に絡み合うこととなっているのが直近の相場状況であることがわかります。6月相場は初旬については引き続き停滞しそうではありますが、「FOMC」を境にして一気に動き出すことが予想されます。
この記事を書いた人:今市太郎)