巨大地震などでもそうですが、その惨状は発生直後では判らず被害甚大なのは数日経ってからその全貌が明らかになるものです。
今回12月3日に起きた「ECB」「ドラギ」「QE」不発相場はまさにそれに該当するもので、年に1度あるかないかの猛烈なショートカバーを繰り広げることとなり、今年もっとも儲からなかった「ヘッジファンド」の中でも特に利益が上がらず首切りの危機的状況に直面し乾坤一擲ドルの上昇にかけた「ファンドマネージャー」ほど、大きな損失を被ることとなりました。
その「ポジション」はズタズタに引き裂かれた形で既に市場からの退場を覚悟することになった人物も多いようです。
ドル円だけでみるとたいしたことはなかったように見えますが、ドルストレートの中でもっともウエイトの大きなユーロドルがここまで踏み上げられると、そもそもの投資原資すら確保の危うい状況であり、「FOMC」での利上げを見越して多少ドルが上昇しても焼け石に水の状態となってしまっているようです。
何やっているのだ「ドラギ」と恨めしく思っている個人投資家の方も多いことと思いますが、為替での決め打ちがいかに危ないかを如実に示す結果となったことは間違いなく、直前に「ポジション」をすべて利益確定して高みの見物をしたトレーダーと運よくドテンに成功したトレーダーだけが元気な週明けを迎えており、それ以外は一面の焼け野原が広がる状況となっています。
問題は既に年末相場が終焉したのかどうかの見極め
ドル円研究所が提供してくれています12月4日の「雇用統計」結果を受けたドル円の動きはYouTubeで改めて確認できますが、(https://www.youtube.com/watch?v=XRAyy43fYPg )発表10秒前に122円70銭まで下落してから「非農業部門雇用者数」が市場予想を上回る+21.1万人となり市場は一旦ドル買いで反応し、123円30銭台まで約70銭急上昇。
利食いの売りが出た事で122円75銭へ下落。かつ「OPEC」の報道も嫌気されましたが、その後、下値を固めながらかなり時間をかけて123円20銭台へ再上昇し、かろうじて123円台で週末を迎えることになったわけです。
これを見る限り、少なくとも「ECB理事会」でユーロ安ドル高が加速し、さらに「雇用統計」でしっかり足固めから「FOMC」前にはドル円125円80銭超というシナリオは遠く及ばない状況となってしまったことは確実なようです。
米商品先物取引委員会(CFTC)が4日発表した12月1日時点の建玉報告によりますと、「シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)」の通貨先物市場で「非商業部門(投機筋)」の円の対米ドル持ち高(ドル円のロング)は売りと買いの差し引きで7万4901枚の売り越しとなっており、前回の7万7336枚の売り越しから2435枚減少しています。
「ECB理事会」の前にどれぐらい積みあがったのかが興味深いところですが、その一方でユーロの対ドル持ち高(ユーロドルのショート)は18万2845枚と前回の17万5484から7361枚増加しています。
その後3日までにさらに積みあがったとすれば最高のドルロング状態でショートカバーがおきてしまったことになります。果たして今週このユーロショーとがどのぐらいまで減少してしまったかを確認すればドルの戻り具合もある程度想定できそうです。
ドルインデックスを1時間足で見ますと、完全にチャートの形が変わったしまった感があり、簡単に100を超える上昇過程にはもはや戻らないことが示唆されています。
頼みの綱はドル円
さて、相場の大混乱の中で比較的大きな影響を受けずに生き残ったのが円です。
もちろんユーロ円をショートにしていた個人投資家は立ち直れない状況にあると思われますが、ドル円だけでいいますと、株の下落ほど大きな影響は受けずに済んでおり、「雇用統計」でも大きく上げなかったものの逆に大幅下落も免れており、ドル円プレーヤーの損害は軽微に終わっていることがわかります。
またこれまでの実績から推測すると、ドル円が「FOMC」以降噂で買って事実で売られるような形になるかどうかを占うひとつの判断要素となるのが上述のCFTCのドル円の買い持ちボリューム状況です。
上のチャートとグラフは「アベノミクス」が始まった2013年からのドル円相場の動きとCFTCでのファンド勢のドル円の売りこし比率を表したものですが、10万枚を超えますと、必ずドル円の上昇に歯止めがかかり調整局面が訪れていることがわかります。
CFTCの12月1日段階でのドル円は7万4901枚の売り越しとなっていますが、その後12月16日前までに再度10万枚を試すことになれば、大きく上昇して調整する局面を迎えることになると考えられます。
しかし、このまま売り越しがつみ上がらない、つまりドルロングが増加しなければ「FOMC」に向けて大きくドル円が上昇するとも考えられず、124円を試しにいくかどうかが関の山で「クリスマス休暇」に突入してしまう最悪の状況も考えられるようになってきてしまっています。
この場合でも一定の利益確定売りが出る可能性はありますが、買いもちが限定的である以上売られても大きく下げる可能性も低く、年末はこれにて既にドル円相場は終了している可能性も高くなってきています。となると今年のドル円はとうとう10円強しか上下しなかったことになります。
したがってここからの見極めは難しくなりますが、もしこれで124円超程度のピークがでれば、ここからは一旦戻り売り対応ということも視野に入れておく必要がありそうです。
特にここ2年間、1月は大幅にドル円は下落しており、二度あることが三度あるとすれば年内もしくは年明けピークは売り場として捕らえることが利益確保の道につながることも十分に考えられるのです。
「IMM」の枚数が10万枚を超えればさらに判りやすくなりますが、上昇一辺倒から下落を意識するのがこれからのドル円相場となることだけはどうやら正しそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)