日銀の政策決定とともに勢いよく上伸した29日のドル円でしたが、その後すぐに相場が激しく上下に振れたことが象徴するように、「マイナス金利」に対する市場の評価はかなり二分された状況になっております。
発表から二順目となった月曜日のNY市場では、すでに戻り売りでストップをつけて120円台へと下落する局面も見られることとなりました。
過去二回の「黒田バズーカ」にリニアに反応し、一方的に上昇局面にのった株と為替相場とは明らかに異なる動きを見せているのが今回の「マイナス金利バズーカ」です。
サポートラインを引き上げることには成功していますが、トレンドを上昇へと転換したとはまだいえないのが実情です。多くの市場参加者は一応の評価を買いで示したものの、その先は依然疑心暗鬼の状況となっていることを相場が強く暗示しているともいえそうです。
とりあえず昨年最高値の1/2戻しまでは達成
週明けの東京市場でもドル円は121円台で底堅く推移はしましたが、前回の「黒田バズーカ2」に比べるとその上昇の勢いは乏しく、すでに200日移動平均線の121.500円のラインを超えるのも難しい状況になってきています。
ただ、下値も120.500円を下回らない限りは、簡単に118円方向へ落ちる状況でもなく、狭いレンジの中で上昇への次なる材料待ちをしはじめているようにも見えます。
昨年の最高値である125.852円からの半値戻しは達成したものの、フィボナッチリトレースメントの0.618となる122.076を超えていくことができないと、123円、125円へ上昇する糸口はつかめないのが現状となってきています。
週末の米国雇用統計が引き金になるか?
2月5日は「米国雇用統計」が待ち構えていますが、例年同様今年も雪の影響が大きくでており、大きな数値上の伸びが期待できるとは思えない状況です。
何より1月9日のように数字がよくても息切れして大きく値をさげた記憶が新しい中で、既に利上げがはじまっている状況下での雇用統計の多少のいい数字に本当に市場が反応するのかどうかが注目されるところとなります。
日経平均株価は1万7800円台を回復し、その後もなんとか崩れずに推移しているのが大きな支えとなっていますが、「節分天井」という言葉があるように今週一旦ピークでまた下げに転じることになればドル円もついていく可能性が高く、戻り売りも視野に入れなくてはならない状況に直面しています。
金融市場の当事者にも依然よくわからない難解さをもつマイナス金利
今回発表された日銀による三次元の「マイナス金利」とやらは、時間が経つにつれて日銀の手心次第では金融機関に大きなダメージはないのではないかという見方も広がりつつあります。
その一方で債券市場の金利は大幅にダウンしはじめており、事実上日銀主導の債券バブルが展開されることとなってしまい、相場が正常に機能しなくなってしまった部分も見逃すことはできません。
この政策の「わかりにくさ」が明らかに株と為替の相場状況に現れていることは間違いなく、今後も「マイナス金利」幅を拡大させる政策を日銀がとる可能性はありますが、その結果の相場の動きはこれまでの金融緩和のように大きなものになるかどうかはかなり疑問です。
日銀関係者も今回の緩和措置は少なくとも「3月末までは機能する」と口にしているようですが、政策遂行者の目から見ても2ヶ月程度しか賞味期限がないというのもかなり気になるところです。
当面は、押し目買いと大きく跳ねたところでの戻り売りの両方を視野に入れて売買を行う必要がありそうですが、ドルは引き続き相場の中心になっても円が主導で円安に向かって動いているわけではなさそうなのが足元の為替相場のセンチメントで、外部要因次第ではまた大きく振らされることも常に意識しておく必要がありそうな2月の相場展開となってきています。
引き続き、中国と原油価格の動きには十分な注意をしていくことが望まれます。
(この記事を書いた人:今市太郎)