4月の「FOMC議事録」や「イエレン議長」の講演でたびたび登場する利上げは、あくまで今後の「データ次第のデータ」というのはどのようなものなのでしょうか?今回はこれにフォーカスしてみたいと思います。
今後6月FOMCまでに注目されるデータ
まず、直近に登場するデータとしては3日に発表される「雇用統計」となります。NFP自体と失業率はもはやピークに近いものとなっていますので、賃金の伸びが非常にクローズアップされることになります。
とくに6月の利上げは依然不透明ですから、この指標発表で大幅に上ぶれば利上げの可能性があると見て為替市場も動意づくことが考えられます。翌週に出るLMCI、いわゆるイエレンダッシュボードも注目されることになります。
NY連銀が公表する4-6月期の成長率予測は上昇傾向、アトランタ連銀の同様の指標も底堅く推移しています。
出典:NY連銀NOW CAST PDFより
とくに製造業の景況指数はかならずしも良好な数字で推移していませんので、このあたりが低迷すると利上げに影響を与えるのは必至となります。
GDP NOW ホームページより
もっとも重要なのは原油価格と株価
「FRB」がもっとも政策履行上気にしているのは、実は株価だといわれています。
やはり株価が大幅に下落している局面では、利上げは絶対に持ち出せないのが実情で、6月なり7月に利上げがあるとしてもその直前で暴落や大幅下落が進めば、絶対に利上げは行わないものと思われます。
特に「イエレン議長」は株価を気にしていますので、利上げの可能性を示唆して、株価がどうそれを織り込むのかを見ているように思われます。
さらに株価の動向に影響を与えるのが原油価格ということになります。
4月から5月に向けて株価とは関係なく一方的に「WTI」の原油価格が上昇した背景には、5月に向けて償還時期が集中する「シェールガス」系のエネルギーハイーイールドボンド(要はジャンク債)が「デフォルト」を起こさないように米国の当局からの要請を受けてファンド勢が作為的にかなり買い上げたからではないかという噂が聞こえてきます。
中東の産油国も米国の「シェールガス」いじめをしてみたところ、自国の状況のほうが危うくなってしまったという経緯もあるため、価格政策だけではなかなか息の根を止められないことはそれなりに自覚したようで、26ドルというのがどうやら原油価格のボトムであったことは間違いないようです。
こうしたことから50ドルを超えて大きく上昇することは難しいものの、今の価格水準はなんとか維持していく可能性が高く、この1月~2月あたりの相場状況に比べればかなり原油は安定したことから、米国の利上げにとっては好都合な状況になっているといえます。
相変わらず不透明なのは中国の状況
「安倍首相」がサミットで持ち出してきた「コモディティ価格」の推移はだれの差し金によるデータなのか知りませんが、確かに中国経済の不振に起因する「コモディティ価格」の下落はかなり明確になっていることは事実です。
しかしそれ以上に心配なのが沿岸地区の不動産価格の再暴騰で、しかも債券市場での社債発行企業の償還不能から起こる「デフォルト」の増加も暗い影をさしています。
また米国が利上げを行うと、米ドル建ての新興国の債券にも大きな影響を与えることになりますから、事前のデータよりも米国が利上げすることで影響を受ける国や金融商品、市場について本来はより気にかける必要があります。
冷静に考えて見ますと、米国が自国の経済データだけから判断して無闇に利上げを行うと、やはり新興国を中心としてその影響を大きく受ける国があり、実はそれが回りまわって米国の景気や株式相場にも影響を与えるという皮肉な構造が存在することがわかります。
このコラムでも頻繁にご紹介している「CME」のFedWatchの足もとの数字では6月の利上げ確率は28.1%と「イエレン議長」発言を受けても下落しており、6月よりも7月の可能性のほうが高いことがわかります。
ただ、「FRB」としてはできるだけ早めに利上げを行っておきたいことは間違いないと思われるため、引き続き状況をチェックしていく必要があります。
(この記事を書いた人:今市太郎)