FXのみならず、株式市場を含めて日本人投資家の多くが利用するチャートといえば、なんといっても一目均衡表です。もともと株式のために人海戦術で作られたこのチャートには二次元であるにもかかわらず時間軸が入ってきており、その内容を完全に理解するのは至難の技であるとも言われます。
そんな中で一目均衡表の中ではもっともポピュラーなのが「雲」の存在になります。チャートの基礎知識として一度はその概要を読まれた方も多いことと思いますが、実際足元の相場でこの日足の一目均衡表の雲の下限が邪魔をして21日の「日銀政策決定会合」や「FOMC」を前にしているのに上値が重くなりつつあるのがドル円のおかれている状況です。
そこで、あらためてこの一目の雲というのはどういうものなのかについて触れてみたいと思います。
そもそもこの雲の存在とは?
このコラムではあくまで足元の状況を把握するために雲の存在について考えていますので、あまり基本的なところまで遡ってご説明することは控えますが、ちょっとだけ復習しておきますと、一目の雲は「先行スパン1」と「先行スパン2」に挟まれた領域を示したものです。
冒頭でも書きましたがこの一目均衡表の最大の特徴は時間軸を取り入れていることで、転換線、基準線、先行スパン1、先行スパン2は以下のような計算で割り出されています。
転換線 = (過去9日間の高値 + 安値) ÷ 2基準線 = (過去26日間の高値 + 安値) ÷ 2先行スパン1 = { (転換値+基準値) ÷ 2 }を26日先にずらしたもの先行スパン2 = { (過去52日間の高値+安値) ÷ 2 }を26日先にずらしたもの、日付は過去9日と26日が一般的ですがユーザーの好みと志向でいくらでも可変的に設定することが可能となります。
ただ、あまりにもこの設定が国内では普及していますので同じチャートを見るというメリットがありますので、一応はこのままで利用していくことがお勧めになります。
このうち先行スパン1と2とで挟まれた領域で表示される雲は、以前にその通貨ペアを取引した元のポジションの残高水準を表しているからで、売りポジションをもっている人間が多ければ相場が上がってほしくないと思う人たちが多数存在することになりますから雲は相場の上に形成されることになります。
今年のドル円の日足では、常にローソク足の実体の上に雲が形成されてきています。
一方買いポジションをもっている人間が多ければ、逆に雲はローソク足の下側に形成されることになるというわけです。一言でいえば、雲は過去のデータに基づいて未来における市場参加者の心理を絵にして表したものともいえるわけです。
今年に入ってからドル円は日足の雲を一度も抜けていない
さて、ここまでの話は気の利いたFXの教科書本ならばどこにでも書いてあることであえて読み返すまでもないものですが、すでに3分の1が終了してしまった今年の相場を振り返ってみますと、なかなか面白いことがわかります。
上記、日足の一目均衡表のチャートは国内のFX業者ならばどこでもすぐに確認できるものですから、よく見えるようにするなら、まずご自身で使われているチャートでご確認いただくのが一番ですが、1月以降ドル円は常に下がり続けて6月の「BREXIT騒動」のときに底をつけ、8月のお盆時期に再度底をうかがう動きになったことはご存知のとおりです。
年明けからの一番の高値は1月29日の日銀のまさかの「マイナス金利」実施の政策発表時の高値121円50銭台ということになりますが、このタイミングでは2.5円強の上昇があったものの、チャートでみますとこの一目の雲の上限は抜けずに終わっていることがわかります。
その後ドル円はずるずる下げることになり雲からローソク足は乖離してしまいますが、7月参議院選挙後に「ヘリマネ」騒動が起きて「バーナンキ前FRB議長」が来日したあとに急激に相場が上昇し、107円台中盤まで上伸したときでもやはりこの雲の上限を抜けてはいないのです。
そして直近では9月の「雇用統計」の結果を受けて、米系のファンドの仕掛け売買からなぜか104円台に上伸する場面がありましたが、ここからは雲の下限すら抜けられなくなっており、いよいよ19日の週からは、この雲の下限が102.300円レベルに降りてくることになるのです。
ここ数日103円台をつけてからはこの雲の下落に合わせて相場の上値も抑えられており、21日の二つのイベントを受けてこの雲をドル円が抜けられるのかどうかが大きく注目されるところです。
ココへ来て雲の厚みが薄くなりつつありますので、あっさり抜けることも考えられますが、上限で上値をとめられるとなると103.500円レベルで頭打ちになることも考えられ、21日の「日銀政策決定会合」ではまずこの雲の上限を抜けるのかどうかチェックしてから売買しても遅くはなさそうです。
「CFTC」が16日発表した13日時点の建玉報告によりますと「CME」の通貨先物市場で投機筋のドル円のショートは5万6846枚と前回の5万4489枚からまたしても2357枚増加しており、一目の雲の下落とシンクロしていることがわかります。
恐らくですが、上方向はよほどポジティブなサプライズがないかぎりこの雲の上限をあっさり超えていくことはありえないのではないかと推測されます。
ただ、この雲の厚さというのは抵抗の強さを示しているわけですが、足元では厚みを増さなくなっていることから、上抜けが近い可能性もでてきているのです。実際にこの先どういうことになるのかはチャートを見ながらのお楽しみという状況です。
(この記事を書いた人:今市太郎)