ここ数年、とくに米国の「QE」が終焉し、その代わりに日欧の金融政策当局が参加して「マイナス金利」など過去にないような「金融政策」が実行されるようになってから欧米系の多くの「ヘッジファンド」の収益が急激に低下するようになっており、想像を絶するほど苦しい戦いを強いられていることがわかってきています。
この惨状を理解すると、今相場で展開されている動きがどうして行われているのかもかなりその理由がみえてくるようになるのです。
インデックス型ファンドを下回る運用成績
「ヘッジファンド」の資金運用が、プロの視点で通常の運用よりもさらに高い成果が見込めることから余分な取引手数料も支払っているわけですが、これが一般のインデックスファンドの運用益を下回ってしまったりしては、投資家にとっては何のメリットもなくなってしまうことになります。
「ブルームバーグ」が発表しているデータによりますと、約300兆円ほどの運用規模を誇る「ヘッジファンド」の過去3年間のリターンは年平均2%と大半のインデックスファンドの運用益を下回る状態で、成績不振と高額な手数料を嫌気して多くの機関投資家がファンドから資金を引き上げる動きが顕在化しているといわれます。
「ブルームバーグ」の報道ではこの1月から9月までの累積でもざっと515億ドル、日本円にして5兆2000億円以上の資金が引き上げられており、この11月や12月の期末に向けてはさらにその資金流出が本格化することが見込まれているのです。
今年は45日ルールが為替市場にも本格的に影響
毎年この10月中旬になるとファンドの解約45日ルールにしたがって、顧客からの解約に応じたファンドが解約資金を確保するために保有ポジションを処分する動きがでると言われてきましたが、近年ではそれほど顕著な動きというものは見られませんでした。
しかし今年に関しては、ドル円で夏から異常に積みあがったドル円のショートを崩してこうした解約資金に充当したファンド勢がかなり多かったようです。
「CME」のシカゴIMMのポジションを見ていても、ドル円の買いがほとんど増加しない中で一方的にパフォーマンスのでないドル円ショートだけが買い戻されたようで、今週末発表されるデータをみれば判りますが、この45日ルールにあてはまる10月14日をめがけてかなりの換金処分の反対売買がでたことが確認されています。
この間、米国の株式相場は比較的堅調に推移していましたから、何も生み出さないスラック投資コストとなってしまったドル円から資金が真っ先に逃げていったことは間違いないようです。
10月からの外国人投資家の日本株買いもファンドのお家事情から
足元では10月初旬から外国人投資家が日本株を買い越しに回る動きを見せていますが、これも昨年の10月や11月の「ヘッジファンド」の動きを思い出してみると、その利益獲得スキームがファンド勢のこの時期における利益積み上げというお家事情に基づくものと同じであることに気づかされます。
昨年のこの時期も外国人勢が東京タイムで大きく買いあがり、相場が反転上昇したイメージを広くアピールした割には週末の建玉残高をみると、買いポジションの増加は非常に限定的であったことが思い出されます。
また東京タイムでは大きく買い越すのに残高は売り越しになるという、マジックまがいの売買をしかける欧州系の証券会社も存在し、その取引内容は極めて不可解なものであったことは記憶に新しいところです。
今年も確かに表面上は外国人勢が買い越しになりはじめていますが、結局のやり口は昨年の手口に類似したものになる可能性が高く、日銀が「ETF」を買って下がらない、しかも閑散とした薄商い相場の中で自作自演的に利益を刈り取りしている最中であることは容易に推測することができます。
一部の証券関係者からは、年末に向けて大きな上昇トレンドが復活するといった妙に自信たっぷりの声も聞かれますが、昨年末同様米国が利上げに踏み切れば株価に一定の下落調整がでることはほぼ間違いなく、日本株もそれに追随することになるでしょうし、ドル円も円高リスクが一時的にかなり高まる可能性があります。
このようにファンド勢の計末を見込んだディールが終焉すると、相場の動きが大きく変わる可能性に相当注意をする必要がでてきています。特にドル円はっ単純に上昇することを妄信しないことが重要です。
(この記事を書いた人:今市太郎)