為替市場はすでに米国大統領選挙のことで頭が一杯という感じで「FOMC」のことも話題にならなければ、今夜発表になる「雇用統計」が良くても悪くてもおそらくほとんど反応しないまま週を終えることになるものと思われます。
これまでトランプリスクをまったく織り込んでこなかっただけに、土壇場で大騒ぎになる稚拙さはなんとも迷惑な話ですが、どうなるかわからない大統領選の行方とは別にしっかりとした兆候が現れ始めているのが「WTI」の原油先物価格の動向で、投機筋の巻き戻しも手伝って足早に下落を進めているところが非常に気になります。
外堀からドル円が上がらなくなる材料がしっかり示現
10月に入って史上最高レベルまでロングが積み上がった「WTI」原油の先物は、50ドル超で更なる上昇も一時的に見込まれることとなりましたが、11月30日のジュネーブ総会でうまいこと個別国の減産が合意しないのではないかとううネガティブな見通しが顕在化するとともに案の定ロングの解き売りがかさみ始め、足元ではなんと44ドル台まで下落しており、40ドルに到達するのも時間の問題になりつつあります。
この動きは当面収まらない可能性が高く、下値は前回の下落ほど大きなものにはならないものの、需給のバランスで上昇が図られない状況が継続しそうな気配になってきています。
また減産に合意のはすのロシアが逆に増産を続けており、いつもながら「OPEC」では減産をうまくコントロールできないのではないかという諦めが市場に漂っていることは間違いありません。
外堀からドル円が上がらなくなる材料がしっかり浮上中
これまでのドル円と「WTI」原油先物の価格変動を比較してみたのが上記の図となります。
右がドル円、左が「WTI」原油のチャートとなりますが、ご覧の通りで、2009年以降からは結構シンクロして動いていることがわかります。
一般的には、原油価格が下落するとドル高が進行することになるのですが、ドル円に限っては原油価格と同様に下落する傾向があり、「リスクオフ」で円高を示現しやすいことがわかります。
現在「WTI」の原油価格は大幅なロングの巻き戻し途上にありますので、11月30日以降減産の個別合意がとれないことが明確になれば、さらに下落することは間違いなく1バレル40ドル割れもそう長い時間がかからないものと思われます。
ということはドル円も原油価格だけからみれば、また下落の材料となるリスクはかなり高いといえます。やはり原油というのはきわめて投機的な商品であることをあらためて思い知らされる状況で、投機筋が多く関与しているだけに巻き戻しによる相場の下落も非常に早いペースなのがなんとも気になります。
原油価格の下げは株価の下げに繋がりますから、日銀が「ETF」で買い支えている関係上大きく下げないはずの日経平均にも影響が及ぶことは必至で、年末に向けてはドル円の下落要因が積みあがることとなってしまいます。
株価の下落は12月FOMCの決定にじわりと影響も
11月の「FOMC」は市場からほとんど何も期待されていませんでしたが、それを見越したように声明文にもとくに12月利上げを示唆するような文書が登場せず、市場が織り込んでしまったほど「FRB」は利上げを確定させていないことが窺える状況です。
大統領選挙はたしかに大きなイベントではありますが、一過性のものとして乱高下が落ち着いた先にあるのは、必ずしもドル円の上昇ではないことが改めてぼんやりながらも見え始めています。
本来大統領選挙後株も為替も上昇して12月14日の「FOMC」で利上げが決定して下落に転じるといったシナリオを考えいましたが、先に原油価格が崩れてしまったことで、ドルの上昇は進んでもドル円は逆方向に動き、10月に4円近い上昇を果たしたドル円はすでにその半分近くを吐き出す形となっていますから、当初の想定とは異なる動きになるリスクがではじめています。
特に米国のNYダウはかなり原油価格に支えられて上昇してきただけにここで梯子をはずされると一体どうなってしまうのかが非常に注目されるところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)