5日に発表された米国の7月雇用統計における非農業部門雇用者数は、市場予想を上回る20.9万人増となり、平均時給も前月比で+0.3%と市場予想と一致も前月の+0.2%から伸びが加速し、失業率は4.3%に改善されました。
data:マネーパートナーズ
良好な結果となった米雇用統計を受けて、米金利は上昇、米株も上昇、そしてFX市場ではドルも上昇しましたが、持ち上がっても相当上値は重く、110.800円にも届かないレベルで、市場参加者が少ないなかでアルゴリズムが積極的に反応した程度という印象がありました。
しかしその後さらにドル円相場が持ち上がりはじめたのが、次期FRB議長に指名かと噂されているコーンNEC議長の発言となりました。
コーンのレパトリ発言でFXでは、ドル円が再上伸
photo:ロイター
ドル円相場が大きく上伸したのは、むしろその後にコーンNEC(米国家経済会議)委員長が「税制改革は企業がレパトリ(資金の本国還流)を行いやすいような計画を立てている」と発言したことが大きく影響しています。
雇用統計後に更にドルの買いが進みドル円は先月28日以来となる111.05円、ユーロドルは1.1728ドル、ポンドドルは先月26日以来となる1.3024ドルまでFX市場では総じてドルが買われることとなりました。ユーロドルも久々に1.17レベルまで押される展開となり、ドル高が鮮明な状況となりました。
確かにブッシュ政権時代に一回かぎりのレパトリ策がでたことからドル買い需要が示現したことがあったのは事実ですが、この手のレパトリは恒常化するとそれほどFXには大きな影響を与えないという見方もあり、とりあえず市場はコーン発言に一定の反応をしてみたという感じにとどまってます。
その後は終末の調整も入り、ドル円は下落傾向になり110円台で週の取引を終えています。
>問題は週明けからのFX相場
さて、ここからさらに気になるのが週明けのFX相場です。11日は山の日ということでお休みになりますが、国内ではSQが前倒しの10日なることから仕掛け的な売りがでればドル円も下押ししそうな雰囲気で、儲かっていない米系の投機筋ならやりかねない動きが見られそうです。
一方異常に投機筋に売買された感のある米ドル/カナダなどは、かなり一服し始めてていることから、ユーロドルがここからどこまで上昇するのかにも注目が集まります。
また、ここのところのFXでのドル円の独特の動きとして雇用統計で上昇しても翌週には大きく下落してくるという動きが今回も示現するかどうかが気になります。
CFTCが4日発表した1日時点の建玉報告によりますと、CMEの通貨先物市場で投機筋のドル円のロングは11万2196枚と前回の12万1489枚から9293枚減少し、さすがに110円割れまで下落したドル円を受けてロングを投げ始めている投機筋が存在することが見えはじめています。
また、ユーロドルのロングは8万2637枚と前回の9万842枚から8205枚減少していますが、ただまだ相当ロングが残っている状況です。
ドル円は大きく突っ込んでも109円台を割れるほどにはならない可能性もあり、逆に一旦底値をつけた場合には絶好の買い場になる可能性が残されています。
ただ、すでに109.800円手前まで下落していますから、ここを下回るとそれなりにストップロスがでるリスクは残されることになりますが、109円手前では猛烈な買いが入ることも想定しておくべきです。
米国の債券市場はすっかり金利の上昇はないと見切っているようですが、ここからまさかの債券金利上昇があれば、再びFXの世界でもドル円が上昇する可能性はまだ残されており、あまり相場を断定しないほうがよさそうな状況です。
いずれにしても夏枯れでFX市場でも相当市場参加者が減っていますので、夏休みもとらずに市場にでてきている投機筋がご利益を得るために仕掛けで一時的に大きく売りを入れてくる可能性は高いものの、底では売りにうかつについていかずに、すかさず買い戻すといった機転をきかせることが重要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)