今年4月後半からFX市場では大きくドルに対して値を上げてきたユーロですが、依然として買い意欲は強いものの先週金曜日の「米国雇用統計」をきっかけにして一旦調整が入りそうな気配となってきています。
ここ2年近く上昇の上値を抑えられてきた対ドルでの1.17を明確に超えてきたわけですから、倍返しでここから1500ポイント以上の上昇を狙いたいという投機筋の思惑もわかりますが、思った通りにすんなりと動かないのがFXの世界ですから、一旦調整が入る可能性も視野に入れておきたい状況になってきています。
ここから流れが明確に変わるかどうかはまた別の話ではありますが、再度上値追いに順張りでついていくと取り残されるリスクがでそうですので、十分に気をつけたほうがよさそうです。
さすがにロングがたまりすぎか
「CFTC」が発表している8月1日現在の「CME」のFXにおける投機筋のポジションではユーロドルのロングは「8万2637枚」と前回の「9万842枚」から「8205枚減少」し始めており、さすがに買い過ぎに調整が入ってきていることが見受けられます。
ここ数年のユーロドルの出来高としては異例のユーロロングの状態になってきていますから、調整が入ってもおかしくはない状況といえます。
投機筋はさらに1.2より上を狙いたいところなのでしょうが「ECB」が明確に出口戦略を履行することが決定するなどの追加材料の支援がないと、ここからさらなる上昇には至らない可能性もでてきているようにも見えます。
ユーロドルのチャートに「RSI」と標準偏差をのせたものを見てみましても、一旦ピークをつけた感があり、次なる上昇のタイミングを見計らう必要がありそうです。
6月後半から明確に上昇をはじめた標準偏差ですが、RSIのほうはすでに1.19をつけたことでピーク感が出始めており、再度調整して標準偏差が底から上昇しはじめるタイミングを待つほうがより安全な取引ができそうです。
すでに日足ではボリンジャーバンドの+1σの中に入り込みはじめていますから、センターラインレベルまで調整が入っても決しておかしくはないように見えます。
対ユーロでは圧倒的に弱い状況をさらけだしているドルですが、ほかの通貨ペアでもドル安一辺倒に一定の巻き戻しが入っているのは事実ですから、あまり無理をしない取引方法を考えたいところです。
ユーロドルはピークからすでに金曜日の段階で200ポイント近く下落していますので、このまま上昇を継続するかどうかはもう少し様子を見てから判断したい状況といえます。
ドル安にさらなる調整が入るとすればFRBの動きがポイント
米国の債券市場ではすっかり長期金利が低下してしまっており「FRB」の利上げスピードと資産の縮小に対する取り組みは後退しているかのように捉えているようですが、ほぼ退任が決まっている「イエレン議長」が最後の仕事ということで、オンタイムで利上げも資産縮小も実施することになれば、相場は一気に巻き戻しを余儀なくされることは間違いなく、ドル円やユーロドルに大きな影響がでるリスクはまだ残っているといえます。
この段階ではなにも断定することはできませんが、債券市場はあまりにも先行きに楽観的になっていますから、ここに巻き戻しが入ることになると予想をはるかに超えるレベルで債券に投げが出ることも予想され、金利の上昇を招くことは十分にありえそうです。
ただ、債券金利上昇からドルが買われる事態になれば、今度は「じり高」を続けている米国の株式市場が変調をきたし、大幅調整に至るリスクが高まりますので、ユーロドルは再上昇、ドル円は下落という再反転タイミングが到来することも考えておく必要があります。
したがってここからの相場は一方向だけへの動きを断定するのではなく、フレキシブルに相場の動きが変化することを想定しながら売買していくことが重要です。
あまり思い込んでしまいますと、事前にイメージした動きと異なる動きが実際にでてきたときに対処できずに大きな損失を抱えることにもなりかねません。常に複数のシナリオは用意しておいたほうがよさそうな夏のFX相場状況です。
(この記事を書いた人:今市太郎)