FX投資の世界では「下手なナンピンすかんぴん」という言葉があります。この言葉からも分かるように、ナンピンはあまり良い方法とは捉えられておりません。
なぜここまで評判が悪いのでしょうか?それは、単純に多くの人が儲からないFX手法だと思っているからでしょう。また、儲からないだけではなく、「何の計画性もないナンピン」は1回の失敗で全てを失ってしまう可能性があるのです。
ナンピンの由来は?
ナンピンという言葉は、FXでも株でも使われていますが、漢字で書きますと『難平』と書きます。
「難を平らにする」という意味から、このように呼ぶようになったようです。
その歴史は古く、現在の金融市場で使われる以前に、江戸時代の米商人の間で使われてきました。その当時から、損失を後回しにするだけの「愚か物」という意味合いがあり、どうやらナンピンは江戸時代から良いイメージは持たれていなかったようです。
ナンピンを実際のFX相場を例に解説
ナンピンとは何か?実際のFX相場の”買いポジション”を例にして説明していきます。
例えば、円安(ドル高)方向へと動くと予想して(100.00円)でドルを買った場合に、予想に反して相場が下落したとしましょう。この場合に、追加で(99.50円)の時点でもう一度買っていきます。(買い増し)
そうすると、2つの買いの平均価格は(100.00+99.50÷2)=(99.75円)になります。このように買い増しすることで、FX相場が(99.75円)まで回復すれば、損失を出さず済むというのが、この方法の発想となります。
上記のチャートを見れば、「なんて効率的な方法なのか!」と思ってしまいますが、ナンピンには大きな弱点も抱えております。
それは、以下のチャートをご覧になっていただければ分かりますが、相場が常に(99.75円)まで戻ってくれるとは限りません。トレンドが発生して、(99.00円)(98.00円….)と下落が加速していき、含み損が雪崩式に増える可能性もあるのです。
このように、相場が下がり続けた場合には、最初のポジショは元より、2回目にナンピンしたポジションまで含み損が膨らみます。
この結果、単独のポジションの損失よりも、更に大きな損失を計上する恐れがあるのです。このような特性から、FXの入門書などではナンピンを勧めていないのが現実です。
なぜ、ナンピンを行うと大きく負けてしまうのか?
基本的に「ほとんどのFX取引においてナンピンは成功」します。
FX相場は「波」ですので、上昇と下落を繰り返してチャートを形成するからです。しかし、これを多用すれば、いつかは損失を拡大させる場面に出くわすことになります。相場は時として、誰もが想定していなかった動きをします。それは、過去のFXチャートを見れば一目瞭然です。
例えば、2008年10月20日~10月24日の5日間でポンド円通貨において、「買いナンピン」をしていた場合、どうなってしまうのかを見ていきたいと思います。
リーマンショックから約1か月後の相場ですが、5日間の値幅は「4040pipsの下落」になっています。
※ポンド円日足
最初のポジションをどこで持つのか?にもよりますが、買いポジションを持った時点で、これほどの下落が起こるなんて誰も想像していません。当然、チャートの右下は見えない状況です。
ですから、最初のポジションの平均コストを有利にするため、ナンピンのFX手法を使っている人であれば、早いタイミングで買い増しをすることになると思います。
その結果、レバレッジを掛けていた場合は、間違いなく「強制ロスカット」に掛かってしまいます。私のFX初心者時代は、上記のような相場で買い増しをして、損切りを一切せずに、典型的な負けトレードを繰り返してきました。
その時の感情は、
1.「含み損による焦り」から始まり、
2.徐々に、「いくら何でも下がりすぎだろう。」という自分勝手な予想が入り、
3.最終的には、「もう一つ買いポジションを持とう」という間違った決断に至るのです。
この光景は、凶暴な人食いサメがいる広大の海の上の綱を、命綱なしで渡っているようなものです。無謀なナンピンは”転落したら死を迎える”まさに危機的な状況に直面しているといえます。
レバレッジや、エントリーの回数によってはナンピンしたポジションが助かる可能性もありますが、このようなトレードを繰り返していては、間違いなく精神的な苦痛を抱えることになってしまいます。
「何の計画性もないナンピン」は、間違いなく、いつか大怪我をしてしまいます。ナンピンに警鐘を鳴らしている投資家が多いのは、それぐらいFXでの失敗事例が多いことを示しているといえます。
「倍ナンピン」とは何?
2013年TBSのドラマで半沢直樹が放送されてから「倍返し」という言葉流行りましたが、相場の世界でも「倍ナンピン」というものが存在します。
これは、ナンピンをする際に既存のポジションの倍の額を設定することで、損失の埋め方のスピードを早めるやり方です。
例えば100.00円で「10枚」の買いポジションを持ち下落。そこで、平均コストを下げる為に、99.50円で再度買いポジションを持ちます。この時に「10枚」ではエントリーせず、倍ナンピンのルールでは、2倍の「20枚」でエントリーをするのです。
同じ枚数であれば、99.75円で含み損が解消されますが、枚数を倍にしたことで「99.67円」まで保有すれば、建値で決済できることになります。この場合ですと、倍ナンピンをした時としない時を比較すると「8pips」の差があります。
これは、精神的にも非常に大きな違いとなります。しかし、注意すべきは、「リスクも2倍」になることです。当然、レバレッジが多く掛かっているわけですから、資金を失ってしまう確率も上昇してしまうのです。ですから、この方法は、決しておすすめできるものではありません。
マイナススワップナンピンは不利
FXでナンピンをする場合、不利な状況に陥るのは「マイナススワップ」となる通貨ペアを持った場合です。たとえば、豪ドル円を売った場合、1万通貨(1枚)ですと、あるFX業者は、80円近いスワップポイントを支払うことになります。
追加でポジションを持っても、すぐに相場が回復するわけではなく、何日も足止めを食うような場合には、マイナススワップポイントが累積することにります。
これが、数週間であれば「仕方がない手数料」なのかもしれませんが、いつまでも決済できずに数年となってしまえば、マイナススワップは、損益を悪化させる材料となります。
スワップポイントが溜まっていく状況は、まさに貯金箱に小銭を入れる感覚ですが、毎日スワップポイントが引かれるのは「財布に穴が空いている状況」です。
このような状況では、お金以上に精神的なダメージを、毎日食らうことになります。
自分の思惑通りの値動きで、為替差益がプラス方向に発生していている状況であれば、何の問題もありませんが、「含み損+マイナススワップ」というダブルショックに耐えれる人は、少ないのではないでしょうか。そもそも、そこまでして、ナンピンをするかどうかも含めて、損得勘定をしっかりと行い戦略を立てる必要があります。
FXは結局「損切りに勝るものなし」
FXで勝ち続ける為にはFX手法を確立して、それをしっかりと遵守することが極めて重要になります。
例えば「20pips逆行した場合に損切りする。」というルールをを実行していれば、ナンピンをする機会は訪れません。つまり、ナンピンをせざるを得ない状況というのは、損切りを履行できていないことを暗に示します。
したがって、理想的なFXの売買方法としては、自分のエントリーが間違っていたのであれば、一旦損切りをしてポジションをクローズする方法が最も効率的です。損切りをすることで、ポジションは精算され、また気持ちもリセットすることが出来ます。
そのうえで、再度同じ方向にポジションを持ちたい根拠があれば、倍の枚数を設定するなり、実行すれば良いのです。目先の損失を確定させずに、元に戻したいというのはトレーダーの心理としてはよく分かります。
しかし、結果的に、一旦損切りをして入りなおした方が、より有利な位置でポジションを持てる可能性が高まるという事を忘れてはなりません。
テクニカルとファンダメタルの一致
ここまで長々と、「ナンピンがいかにダメな方法であるか」デメリットについてお話してきました。
しかし、FX投資家のなかではナンピンを「武器」として使用している人も存在しています。
例えば、月足・週足・日足と全てが同じトレンドを描いていて、ファンダメンタルズでも上昇の傾向が強い時などは、ナンピンを有効に使えるFX相場といえます。
たとえば2013年から始まった「アベノミクス相場」 これは私的な意見ですが、ドル円相場で言いますと、「月足の下落トレンドライン」と「85.57円のネックライン」を抜けた状態が全ての条件が揃った”買いポイント”であると考えておりました。
このようなFX相場では、多少無理をしても積極的に買いポジションを保有するのも1つの戦略です。
上昇トレンドのなかでも、突発的な押し目というのは入ります。そのようなダマシの値動きで損切りをせずに、ポジションを保有できるのはナンピンのメリットです。
しかし、常に考えなくてはならないのは「相場に絶対はないよ」ということです。何らかの理由で、トレンドが転換して、急落することもあり得ます。
ですから、私がお薦めしたいのは、「強制ロスカットになるまでポジションを取り続けるナンピンではなく、最終的には、確実に損切りを行うナンピン」です。
ナンピンには”試し玉”という方法もある
相場の格言に「試し玉を活用せよ」という言葉があるように、「試し玉」は立派なFXの投資戦略として確立されている方法です。
これは、1回で反発・反落ポイントを見極めるのは非常に難しい。だったら、最初は様子見として少ない枚数から投入し、そこからチャートの動きをみて、いけると思えば枚数を追加する。または、様子見のポジションが逆行したのであれば、次のサポートやレジスタンスで、再度戦略を立てなおすというFX手法になります。
もちろん、最初の戦略が間違っていたら、すぐに損切りをするというのが理想的ですが、試し玉では通常よりも少ない枚数でエントリーしているので、FX取引に余裕が生まれます。取引枚数の少なさが、冷静な判断を行える精神状態にしてくれるのです。
試し玉を行う枚数や損切りのタイミングを掴むまでは、経験が必要になりますが、このFX手法を使って安定した利益を残している方もいるようです。
ナンピンのFX手法まとめ
最後に、当サイトで紹介しておりますFX手法の中から、ナンピンの考えを取り入れた方法を「3つ」紹介させていただきます。詳しい情報は、それぞれのリンクから閲覧下さい。
また、下記3つ以外のナンピン手法はFX手法絞り込み検索でも探すことができます。現在「約80種類」のナンピン手法が投稿されております。80種類もあるということは、それだけ国内のFX投資家に「ナンピン」は人気があるということですね。 ⇒ 詳しくはこちら