「両建て」という取引をされたことがありますでしょうか?
両建てとは、その名前の通り、特定通貨ペアで「買い」と「売り」のポジションを両方持つ行為のことをいいます。
この行為の有効性については「賛否両論あり」、FXトレーダーによってその考えは違います。
FX業者によっては、ポジションの反対売買をした途端に相殺にするところもありますし、そもそも買いも売りもFX業者にコストを払って何のメリットがあるのか分からない。という方も多いのではないでしょうか。そこで、両建てはどんなときに役立つのか?を考えてみたいと思います。
両建てとは何か?
「両建ての定義」を、今一度確認してみます。2つのパターンが考えられます。
1.ドル円を「100円」で買い、同時に「100円」で売りのポジションを作った場合。
2.ドル円を「100円」で買った後に、相場が大幅下落し「98円」になった。買いポジションを保有したまま、「98円」で売りポジションを作った場合。
どちらもFX業者へは、エントリー時にスプレッド分のコストを支払うことになります。
この最初に掛かるコスト以外は、上昇しても下落しても、「それ以上の損失にならない」というのが大きなポイントとなります。2の場合は、既に-200pipsの含み損を抱えてしまっている状況ですが、買いポジションを損切りしなくない場合に、一時的にリスクを少なくする為に行います。
両建ては何のために行うのか?
一番オーソドックスな両建て方法として考えられるのは「スイングトレード」、もしくはポジショントレード(長期保有)をしている時です。相場がしっかりしたトレンドが出ているにも係わらず、一時的に押し目を作って下げ始めるという展開はよくあります。
ここ数年のなかで大きなトレードが発生した「アベノミクス相場」でのチャートをみれば、分かりやすいですね。どんな強い上昇トレンドでも、日足単位では、必ず押し目が入るのです。
※米ドル円日足
このような相場状況で、単純に利益確定をするのでなく、買いポジションを維持して大きな利益を狙いながら、反対売買することで下がった分の利益を確保していくことができます。
具体的な価格を例に説明しますと、80円でドル円のロングポジションを仕込み90円まで上昇した。90円には明確なレジスタンスがあり、一度は意識されて下落しそうに見えた。ここで、80円のロングポジションを持ったまま、90円の新規ショートポジションを建てていきます。
こうした売買の仕方を「つなぎ売り」と呼びます。実際に両建てを行っているFXトレーダーは、こうした使い方が多いとされています。
ただし、どこからが押し目が入る場面なのか?また、どこまでが下げの局面なのか?この判断をするのは、口で言うほど簡単な話ではありません。90円にレジスタンスラインがあるからといって、100%反落するとは限りません。
そのまま、90円をブレイクしてしまい「両建てしなかったら、もっと儲かっていたのに。」という場面に出くわすことも当然あるわけです。このタイミングの掴み方については、かなり難しい判断を迫られるものになってくることは間違いありません。
経済指標に両建てを使う
FXの両建ての使い方として「指標トレード」に利用する方法があります。
例えば、米国の雇用統計を例に説明してみましょう。
事前予想が当たらないことで有名な米国の雇用統計ですが、事前に「買い」「売り」両方のポジションを作っておき、一定の幅にロスカットとリミットを設定します。発表後、片方のポジションは、ストップにかかりますが、動いた方向のポジションは、それ以上の利益を手にすることができます。
逆指値注文を使った方法
両建てを使ったFXの指標トレードでは、「逆指値注文」を利用する方法も有名です。これは、細かくいえば「両方ポジションを持つ」方法ではありませんが、両方注文するという意味で紹介したいと思います。
例えば雇用統計前1分前のレートが、「100.00円」だとして、
・「100.10円」に逆指値買い注文。
・「99.90円」に逆指値売り注文をします。指標発表後に、片方向へ大きく動けば成功となります。
上記のチャートでは、上手く利益が獲れていますが、毎回必ず成功するような手法ではありません。
失敗例としては、大きく動いた時には、FX業者によっては注文レートで約定しない可能性があります。
99.90円で「逆指値指値売り注文」をしていたが、実際に約定したのは99.50円だったなんて事例もあります。いわゆる「スリップページ」というものです。
動きの荒さからこのような事態が起こってしまうのが雇用統計です。ですから、この分の無駄なコストが発生することは認識しておいてください。
また、雇用統計発表後は、相場によっては数分間で100pipsの「往って来い相場」になる事もあります。この為、売りと買い両方がストップに掛かってしまうリスクも考えなくてはいけません。
「指標トレード」で両建てを使用する際は、値動きの特徴を掴むため、過去のローソク足を検証する事や、実際のトレードではレバレッジを調整するなど、十分に対策を取ったうえで取引を行うようにしてください。
強い通貨ペアを買い、弱い通貨ペアを売る
ここまで紹介した「つなぎ売り」と「経済指標トレード」による両建ては、同一通貨ペアによるものでした。しかし、両建ては必ずしも同じ通貨ペアで行う必要はありません。
むしろ「違う通貨ペア」で行った方がリスクの分散になり良い結果をもたらすことがあります。
本記事の最後に「両建て手法」を3つ掲載しており、そのなかの№3でも似た手法が書かれてありますが、「強い通貨ペアを買い、弱い通貨ペアを売る」という両建ての方法があります。
FXの通貨ペアは国内のFX業者ですと平均すると20通貨ペア程しか取り扱っておりませんが、海外のFX業者ですと、50種類を超える通貨ペアの取引が可能です。
その数ある通貨ペアのなかから、「最も強い上昇トレンドが発生している通貨ペア」「最も弱い下落トレンドが発生している通貨」を選択します。
具体的にチャートで確認してみましょう。 これは日足チャートです。
8/9の朝7:00に直近20日の平均で最も弱かった通貨ペアと、最も強かった通貨ペアを確認します。ここでは「21通貨ペア」を比較しております。
そうすると強い通貨ペアが「EUR/NZD」であり、弱い通貨ペアが「NZD/JPY」であることがわかりました。この情報だけで「両建て」をしていきます。東京市場に「EUR/NZD」を買い「NZD/JPY」を売っていくのです。
これにより「旬の通貨」の大相場に乗ることができ、買いと売り、両方のポジションで利益を上げることができます。しかし、この方法が毎回上手くいくほどFXは甘くありません。両方のポジションが、20日平均と同じ方向に勢いよく動けばなんの問題もありませんが、もちろんそうでないこともあります。
ここで、21通貨ペアを比較して「そのなかでの」”一番強い、一番弱い”通貨ペアを売買するというルールが生きてきます。つまり強弱の対局にある通貨ペアを売買していれば、万が一急激な反発にあっても、売りと買いのトータルでは損失をおさえることができるのです。
しかし、どんなに強い通貨でも、弱い通貨でも、いつかは「天井」と「底」をつけることになりますので、必ず損失が発生することはあります。なので、この両建てはトータルの成績で考えるという思考が重要になってくるのです。
また、チャート上で意識されやすい、サポートやレジスタンスを把握しておき、そのラインに近づいたら売買はしない。そして、そのラインをブレイクしたら両建てを始めるなどの工夫を加えることで安定したFXトレードが実現します。
あとは、NZD/JPYが最も弱かった場合において、買いの通貨ペアを選択する場合は「NZDが関連する通貨ペアは含めない」このような対策をとることもできます。
買いについては最初から、NZDを除外して、その他の組み合わせの一番強い通貨ペアを選択することで、売りポジション側のNZDの急激な逆行に対するヘッジを行っていることになるのです。
また、この両建て方法はある程度含み損の値幅を見なければならないので、資金管理には十分な注意が必要となります。
この方法にご興味があり、「毎日通貨ペアの強弱をチェックするのが面倒」という方は、下記のツールが便利です。15分足~日足までの21通貨ペアを数値化して自動で、上位3位までランキング表示ができるツールになります。ツールの特徴は下記のページをご覧ください。
まとめ
こうした両建てのFX取引は、書籍やwebサイトでも、お勧めしない方法として取り上げているところが多いです。しかし、往復に証拠金をかけないサービスを提供しているFX業者が存在していることは、ユーザー視点から見てメリットがあるといえるのではないでしょうか。
潤沢に証拠金があれば、無理をして両建ての売買に踏み切る必要はありませんが、限られた証拠金の中で上手く運用したいと考えた時には、検討してみてください。
特に今回紹介致しました「つなぎ売り」は、「スイングトレード」や長期保有では使いようによっては、戦力になる手法です。熟練した能力が必要となりますが、武器は1つでも多く持っていて損はないと思います。
両建て手法まとめ
当サイトに掲載してある約「30種類」の両建て手法から、特に人気のある手法を「3つ」紹介させていただきます。3つの手法以外は、FX手法の絞り込み検索から「両建て」を選択して閲覧することが可能です。絞り込み検索の結果はこちら ⇒ 両建てのFX手法はこちら
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