読み込み中...注目された日米新貿易協議・通称FFRにおいて、日米両国は農産物などの関税引き下げに向け物品貿易協定・TAGの交渉開始を正式に表明しています。安倍首相はとにかくこれがFTAとは異なるものであるとしきりに説明し、菅官房長官も別物感を醸成するのに必死です。
しかし、FTAは物品以外にサービス貿易も含まれるので、今回のTAGとはまったく異質との説明をする日本サイドとは裏腹に、交渉当事者であるUSTR代表のライトハイザーは日本とは完全なFTAの締結を目指すと息巻いています。
なぜこうしたずれが出ることになったのかは不明ですが、察するところFTAと呼んでは具合が悪い日本側が、なんとか国内向けに名前を変えることを懇願して結局それを米国側が承諾してのではないかというのが事実なのではないでしょうか。
いずれにしてもTPPがどうのと言っていた安倍首相は、完全に二国間交渉に引きずり込まれた恰好になり事前に言っていた話とは大きく異なる交渉が展開することになってしまいました。
交渉中は自動車関税がかからないというのも時限的な措置で、さも大きな成果のように国内では報道されていますが、結果的にどうなるのかはまだ全く闇の中というのが正しい認識のようです。
しかし一つだけはっきりしているのは、今回の米国側の責任者であるライトハイザーなる人物は想像を超えるハードネゴシエーターで簡単に折れるような存在ではないということです。
ライトハイザーとはいかなる人物か？
「ロバート・エメット・ライトハイザー」は今年10月11日で71歳となる米国の弁護士であり、邦楽博士号を有する通商問題の専門家として知られる人物です。
1983年から85年のレーガン政権時に米国の通商代表次席代表を務め、日米貿易摩擦で日本に鉄鋼輸出の自主規制を無理やり飲ませた、かなりのハードネゴシエーターとして知られる人物です。
一説にはこの交渉時に日本サイドが提出した合意案を紙飛行機に折って会議の席上飛ばして見せたという逸話もあるほどで、とにかく無理難題を押し付ける、米国内でも人の感情を逆なでさせたら右に出るものなしとかなり評判の悪い、猛烈な交渉相手が改めて今回の交渉の席についていることがわかります。
日本側が国内広報用に「TAG」という言葉を使うことにどうやって同意を得られたのかはよくわかりませんが、この人物がいる限り中身はFTAで、そもそもUSTR代表就任時の議会宣誓でも日本にはTPP以上のことをやらせると議会宣誓しているのです。
TAGと名前を変えたところでその中身がマイルドなものになる可能性は100パーセントないのが実情で、楽観的な見通しが総悲観になるまでにはそう長い時間はかからないものと思われます。
当然登場するのが日米の為替条項
米国はメキシコとのFTAに為替条項を入れ込んでからは、今後の二国間強制にはすべて為替条項を入れると息巻いており、日本だけが例外対象になる可能性はほとんどない状況です。
これが締結されることが詳らかになった場合、ドル円はかなり円高方向に下落することになりますから、足元で115円以上を目指すのではないかという期待も完全に夢になるリスクが高くなり、しかも中間選挙前になんらかの格好をつけたい米国がこの1か月あまりでそのことについて言及してくる可能性は否定できません。
なぜ国内メディアがこれだけ楽観視した報道をしているのかはわかりませんが、米国を相手にした紡績問題に関する限り、国内でモリカケ問題をけむに巻いたようなトリッキーな操作は一切できないということをあらかじめ認識しておく必要がありそうです。
そういう意味ではドル円はかなり10月クリティカルな状況に直面しているといえそうです。
（この記事を書いた人：今市太郎）
