読み込み中...中国はようやく旧正月である春節が明けようとしていますが、この間米国の株式動向の変調にばかり気を取られているうちに、中国国内でもバブル崩壊の足音が急激に高まりを見せつつあります。
その一端を示す状況が海南航空を傘下に収めている海航集団（HNAグループの経営危機の問題です。この会社はドイツ銀行の大株主としても知られるコングロマリットで、習近平国家主席の腹心である王岐山・前共産党中央規律検査委員会書記が後ろ盾になっている企業としても知られるだけに、具体的な経営危機の内容が非常に気になるところです。
資金難から資産を投げ売りか
中国系企業は経営難が噂されてもバックに政府がついていることが多いため、実際には大ごとにならずに終息するケースも多いのですが、今回のこのHNAグループに関してはすでに資金難から保有する資産の投げ売りが始まっており、状況はかなり深刻であることが窺われます。
16日までにドイツ銀行の保有株式の持ち分比率を下げていますし、ニューヨークに保有するビルも売却しはじめており、久々にチャイナリスクが顕在化し始めています。
とくにドイツ銀行株の売り飛ばしは欧州市場に影響を与え始めており、米国の不動産市場にも少なからず影響を及ぼすことになるため、今後どこまで連鎖的な動きがでてくるのかが非常に注目されます。
同社は1－3月に2500億円超の流動性不足に直面するとみられ、その対策として1.7兆円規模の資産売却を行っており、今後さらに資金需要が厳しくなれば手持ち資産を投げ売りし始めるリスクがかなり高まりつつあることがわかります。
HNAグループは早い話しが党の事業
米国のメディアが伝えている内容ではこのHNAグループはざっと日本円にして11兆円規模の債務を抱えているとのことで、HNA傘下子会社7社の株式がすでに一時取引停止になっており、その資金難は尋常ではないレベルにさしかかってきているようで、今後さらに資産の投げ売りが欧米のマーケットに暗い影をなげかけるリスクが囁かれ始めています。
このNHAグループは見かけは民間企業に見えますが、早い話しが中国共産党の事業のようなものでバックに党がついているにも関わらずここまでおかしくなるという点が非常に不可解であり、そうでなくても様子がかなりおかしくなり始めている米国の金融市場が連鎖的にネガティブな影響を受けることになるのかも気がかりな状況です。
今回非常に関心が高まっているのは具体的に現物の売りが随所に出始めていることで、本当に手持ち資金に窮していることが市場で鮮明になってしまっている状況です。
この手のチャイナリスクは蓋を開いてみるととんでもない広がりを見せることが予想されるだけに周辺にどこまで影響が及ぶのかが注目されます。チャイナリスクに関してはここのところすっかり影をひそめてきており、もっぱら米国の金融市場のリスクの話ばかりが語られてきましたが、どうもリスクの伏兵としてはかなり大きいものがあるようで、ここからは中国の動向にも目が離せなくなりそうです。
不思議なものでこうした問題というのはいきなりあちらこちらから一斉に噴出してくるもので、バブル期の末期症状にはよく見られるものです。
長年にわたる中央銀行の必要以上の緩和措置は世界の随所で過剰流動性となって表れており、本来実施すべきではないような投資にも資金が回りこんできていることを強く感じさせられます。
中国共産党も内輪の問題としては処理できない規模になっているようで表面上はリーマンショックのほぼ10分の1程度の負債総額に見える同社の動きがどこまで拡大していくことになるのかにも相当な注意が必要となりそうです。
とくに不動産は相場の下落局面では極端に流動性の低下する市場だけに投げ売りが始まると市場全体にその影響が懸念されます。
（この記事を書いた人：今市太郎）
