今週トランプ大統領が次期FRB議長の人選を正式に発表するということで、市場は固唾をのんでその結果を待ちわびていますが、実はこうした予測は大きな間違いになるのではないかという、これまでにはない厳しい見方が市場に台頭しはじめています。
それはとりもなおさず、足元で進行中の米国の株式市場の行き過ぎたバブル状況の示現が大きな理由となりつつあるのです。
多少の利上げや資産縮小では市場はまったく反応しない
現状の米国のバブル相場の異常さは、さまざまな指標をもってしてみても明らかにやりすぎで、下がらないから買い上げるとは言ってもこのままこの相場状況を継続させるのは相当なリスクが伴うことになるのは言うまでもありません。
バフェット指数でいえば、米国NYダウはすでに157%を超えています。日本のバブルの最終局目でも140%であったことを考えれば、この数字は異常ですし、ケースシラー博士が独自に開発したシラーPERでも30を超える始末です。
2000年のITバブルの末期や1929年の世界恐慌の時の数字以来の高いレベルを示しているわけですから、この資産バブル状態を「FRB」が放置しておけば次の利上げを実施したとたんに崩壊の引き金を引くリスクも残ってしまい、かなり危ないところにさしかかっていることがわかります。
この夏ぐらいから「イエレン議長」も退任したフィッシャー副議長もこうした資産バブル状態には懸念を示していますから、今や「FRB」はインフレ率と経済状況だけ勘案して利上げを検討しているわけではないことが見えてきます。
パウエルなら低金利温存も殆どあてにならない
巷では中立派のパウエルがFRB議長になれば、トランプの意向通りで来年は積極的に利上げを行わずに中間選挙まで、今の異常相場状態が継続するのではないかといった虫のいい話が飛び交っています。
テイラー博士のような厳密の利上げ論とまではいかないまでも、いまの1%台に金利では足元の過剰流動性が引き起こしているバブル相場を火消しできないという見方もあり、誰が就任しても結局利上げ方向に動く可能性がでてきはじめているのです。
これは直近の「BOC」の利上げ決定を見てもわかりますが、インフレというよりもあまりにも進行しすぎた資産バブル退治の側面が大きく、FRBが同様の発想で金融政策を考える可能性は十分にありえそうです。
とりあえずは新FRB議長就任で相場は一定の思惑で動くことになるでしょうが、実際来年2月に新議長が就任した段階で金融政策が緩やかになると、期待するのはどうも無理がありそうな状況になってきています。
このまま株式相場が上昇すればどこかで激しい暴落も
非常に嫌なのは、今のなんだかわからないのにどんどん上昇してしまう相場状況が終焉を迎える段階です。
上昇するだけ上昇してしまった相場は、どこかで金利の上昇に耐えきれなくなり、いきなり流動性を失いながら激しく下落することが容易に予想され、今回は「リーマンショック」のように不動産という領域だけのバブルではなく、全方位全資産バブルの崩壊であるだけに、相当ひどい結果をもたらす危険性があることはちょっと市場に詳しい人間ならだれでも危惧するところとなっています。
いったん相場がある程度沈みこんでもこの段階でバブルの鎮静化が実現できれば暴落という最悪の事態を回避することもできるわけですから「中央銀行」がそのあたりに気を使いはじめるというのも非常に納得のいく話といえます。
とにかく直近の相場状況では、各市場にとって都合の悪い材料はすっかり無視されるようになっていますが、このままの状況が長く続くとは到底思えないわけで、年内まだ危ないという指摘をする人もいますが、一番危ないのは年明け以降なのではないかとも思われる状況になってきています。
日本の日銀は日経平均が2万2000円レベルでも「ETF」買いをするといったバブルの進行策のようなことを平気でしていますが、21年ぶりに前のレベルに戻った程度ですから確かにこれがバブルかと言われればあまり大した話ではない可能性もあります。
しかし米国の株式市場はあきらかにコントロール不能の領域に入ってきています。これに「FRB」がどう立ち向かうのかが非常に注目されるところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)