今週に入って下落が進むかと思われたドル円は債券金利の上昇で上向きの動きになりはじめています。ただ、113円を抜けたわけではありませんから、単なるレンジ相場への意向と見ることもでき、まだ方向性を断定するのは気が早い状況といえます。
そんな中でホワイトハウスの報道官が「FRB議長人事がこの数日で発表できる見込みである」ことを伝えており、この人事次第でドル円はより上昇する可能性もありますし、再度沈み込むリスクも抱えることになり、あわてずにこの発表を待ってから次のアクションを起こしても遅くはない状況になりつつあります。
ビル・グロースは短期金利上昇自体にも警告
米国は依然として借金経済ですから、これまで長く続いた、きわめて「ゼロ金利」に近い低金利時代が終焉することは消費者経済に非常に大きな影響を及ぼすことになるわけで、その点を最近、初代債券の帝王を呼ばれた「ビル・グロース」も指摘しており、ゆっくり利上げが行われることが、今の金融市場を維持するための大きな条件であることを指摘し始めています。
「イールドカーブ」のフラット化は確かに株価下落の大きな問題となるわけですが、短期金利が急激に上昇するだけでもかなり米国経済は危険にさらされるというわけです。
今のところ、長短金利は「リーマンショック」前ほどのフラット化には至っていないことから、株価が暴落するまでにはそれなりの時間が残されているようにも見受けられますが、「FRB」の「金融政策」が「タカ派」への加速することは、このリスクを一層高めることになるのはどうやら間違いない状況になりつつあるようです。
タカ派FRB議長指名でドル円は上昇に動き出す?
ホワイトハウスの報道官はここ数日で次期FRB議長の指名に関する発表を行うとしていますので、いよいよだれが次の「FRB」を仕切るのかが見えてくることになり、相場も大きく動きそうです。
事前予想のようにウォルシュ、テーラーといった候補が正式決定された場合、とくにテーラールールの生みの親テーラー教授にでもなろうものならドル円はかなり上昇することになるでしょうし、これに起因して株価が大きく下落し始めることも予想されます。
ここ10年で最大規模に達しているファンド勢の米10年債購入に大幅な投げがではじめれば、債券金利はあっという間に上昇をはじめ、FRB人事で相場が大きく下落するといった惨事も起きないとは限らない状況になってきています。
ネームバリューから言うとパウエル、カシュカリはありえない
「ビル・グロース」も「ジェフリー・ガンドラック」も相場を延命させるために、もっとも適切な人事は超ハト派のカシュカリを選択することだとしていますが、その一方で指名の可能性は極めて薄いともしており、ハト派であるとすればパウエル理事、そしてまさかのイエレン続投ということが考えられます。
しかし「イエレン」は年収たった20万ドルのこの議長の地位に固執しなくても退任すれば、1回の講演でバーナンキのように年収分の講演料が舞い込んでくるようになるわけですから、トランプ政権下でFRB議長を務めることに対する、インセンティブは少ないものと思われます。
しかも暴落の洗礼を一回も受けずに退任できることになりますから、もはや辞める覚悟はついてしまっているものと思われ、パウエルの選択がでるかどうかが焦点となりそうです。
トランプ政権下でFRB議長に就任するというのは輝かしい経歴に泥を塗ることになるということで、多くの著名学者が想像以上に抵抗感を持っているといわれますが、果たしてトランプがどういう選択基準で次期FRB議長を選ぶことになるのかが非常に大きな関心事になりそうです。
ここのところFX相場がぱったり動かなかったのもこれが大きな原因だとされていますから、この人事の決定はかなり大きな影響をマーケットに与えることになりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)