前日非常に好調だった「ADP雇用報告」を受けて2日の東京タイムから大きく値を上げたドル円でしたが、発表された「雇用統計」の結果は予想外に悪いNFPの値から失望売りを招きドル円は下落したところから殆ど戻らず、ユーロドルも高値引けとなりました。
ここのところ「雇用統計」時のディールの参加者も減少しているように見えますが、今回は思い切りドル売りをした短期投機筋がNY終盤まで根性でドル安値引けを維持したような相場に見えます。
ただ投機筋のこうした仕掛けは長くは続かず、必ず反対売買を強いられることから週明けは意外にあっさり戻りを試すことになりそうですからこの動きについていくのは相当慎重にすべき状況です。
そもそもNFPと市場予想の差には何の意味もない
米国の「雇用統計」の結果というのは毎回大きなブレが発生します。
これはアンケート形式で米国内の企業に問い合わせをして、この発表前にもどったものの暫定数字だけを用いて、季節変動などは適当に割引ながら数字を作り出すことになるため、集計までにアンケートの戻りが少なければひどく母数の少ない数字結果が出ることになります。
また、元数字がマイナスでも季節変動係数をかけるとしごくまともな数字になるなど、「ビックデータ」が普及した今日を考えればもはや捏造に近い数字であり、表向きは気にしたような顔をしている「FRB」も5万人程度の数字の悪化は誤差範囲としか考えていないはずです。
さらによろしくないのはロイターが金融各社ほぼ100社程度に聞いた事前予想の平均値を市場予測としているので、事前予想にぶれがあると毎回予想より大幅によかったり悪かったりするの繰り返しになっているのです。
すでに本邦系を中心とする個人投資家と短期の投機筋だけが出てきては売ったり買ったりするようになってしまっているので、数年前に比べてNFPの発表後の相場の変動はどんどん縮減しており数字がよくても売られたり、悪くても急に買い戻されたりと素直な反応をする相場時間帯ではなくなってしまっている点が気になります。
今回も短期投機筋が威信にかけてNY引けまでドル安を維持か
結局「雇用統計」を受けた市場はドル全面安となり、そのままNY引けまでほとんど戻ることもなく経過してしまいました。投機筋の仕掛けとしてはよくあるパターンですがどうもこうした動きは長く続かないのが特徴で、週明けにはあっさり巻き戻してしまうのが多いのもここのところの傾向です。
それにしてもNY株式相場がまったく意に介さず相場を上昇させてしまっているのがなんとも気になります。恐らく「FRB」は予定通り6月に利上げを断行をすることになると思いますが、もはや株式市場は利上げのことはお構いなしでじり高を維持していますし、債券市場のほうはとうとう米10年債利回りが2.2%を割る始末となっており、金利上昇を控えても長期金利だけはまったく上昇する気配を感じません。
6月の「FOMC」での正式利上げを受けてこの相関の崩れた関係がいずれ修正されることになりそうで、株式市場の見方が正しかったのか債券市場の反応が正しかったのかはごく近い将来にその結果が現れることになりそうです。
ところで、日本株の市場では本邦の機関投資家が横並びで買いを入れてきた関係もあって日経平均が大きく続伸する結果となっていますが、為替との連動性はまったく見られなくなっており、世界的に見ても米国と日本の株価だけが走り始めて世界同時株高にはなっていないという点も気になるところです。
週明けにはリスクイベントも満載であることから相場が意外なことで巻き戻しに転じるリスクも高くなっており、利益がでたらその都度確定して毎日異なるテーマにしっかり対応できるようにしていきたいものです。
(この記事を書いた人:今市太郎)