日本時間16日未明の「FOMC」での利上げが決定以降、肝心の米国債券市場では10年債の金利が下がり続けています。
ドル円は週初さらに下落に走るかと思われましたが112.500円割れから下にはかなりの買いも並んでいるようで簡単には111円台に突っ込まない状況ですが、上値も重く一定の「ショートカバー」は出ているものの113円にも戻れない動きとなってしまっています。
一体相場ではなにがおきているのか?その手がかりをつかむために「CFTC」の米10年債の売買状況を見てみるとそこにヒントが隠されています。
これは市場の一部に過ぎませんから必ずしも全ての動きと断定するわけにはいきませんが、2月末まで大口の投機玉主体で大きくショートに傾いていた米10年債の売買がここへ来て売りが減って買いにひっくり返し始めていることがわかります。
残念ながら16日以降のデータはこれから発表であるため、利上げ確定後の動きをみればさらにこの状況が顕著になってきていることがわかると思いますが、投機筋は積みあがりすぎた10年債のショートを解消しはじめている可能性が高まっていることになります。
「政策金利」が上がっても国債金利が上がらないのは不思議だと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、債券相場の金利はあくまで需給で決まってくるものですから売り浴びせが強まれば金利は上昇し、買いが集まれば金利が下落するものですから仕方ない状況です。
データ Investing.com
米国10年債利回りは「FOMC」での利上げ発表直後からガクンと下がっており、明らかに市場では米債の買戻しが進んだことがわかります。
債券の買戻しをする投機筋ならば、ドル円が下落することはあらかじめわかりますから発表と同時に躊躇なくドル円も投げたのは至極納得のいく話しということになります。
本邦地方銀行の米国債売りも一巡か
米国債金利の上昇、つまり売りが嵩んだことで評価損をかかえた本邦の地銀が今年に入ってからかなり米国債を売り飛ばしたという話しが伝わってきますが、こちらも2月中にはある程度の決着がついた可能性が高く、「ジェフリー・ガンドラック」が指摘しているように、当座一旦は下落してもその先再度上昇過程に入るまでは、ドル円は簡単に上値を追わない可能性が高まっているといえそうです。
米株は既に高すぎて長期保有の投資対象にならない
ここへ来て米国債が買い戻しの対象となっているのは、足もとの相場では高すぎてこれ以上長期投資のタマとしてかえる株がないという現実もあるようです。
これまでグレートローテーションと称して債券から確実に株のほうに資金が流れてきたのは事実ですが、さすがに93ヶ月目の上昇に入った米国の景気は通常の53ヶ月平均の上昇から比べれば30ヶ月以上オーバーランして上伸しているわけですから、むしろ少しずつ換金して債券にシフトしておこうとする投機筋がでてきても決しておかしな話ではないといえます。
水面下で「投機筋」がこれまでとは異なる行動に出始めていることも十分に考えられる状況です。
ドル円は単体のチャートだけでは上下動が判断できない
さらに市場はトランプ政策の実現にはドル安が必須であることもかなり織り込み始めているようで、少なくとも米国の株式相場はドル高が進まないことを相当前提にして買われている気配濃厚であり、ここへ来て金余りから株も債券も買われる動きへと変化が生じていることも感じられます。
本来10年債金利の上昇過程ではもっと上方向に飛び上がってもよかったはずのドル円でしたが、115円台中盤も越さずに下落に転じているのは、そこはかとなく市場の先読みが価格に反影している結果ではないかとも見ることができます。
ここからもドル円は債券金利を強く意識した動きになることが考えられますが、金利の裏側で誰が何をしているのかを類推しますと相場の動きはさらに精度の高い形で推測することが可能になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)