2月3日に発表された米国の「雇用統計」は、非農業者部門雇用者数が市場の事前予想を上回る22.7万人となりましたが、平均時給の伸びは依然低く、失業率も増加したことを嫌気して112.58円まで下落した後さらに下押しを続け112.315円まで下値を試す動きとなりました。
その後日本時間の午前4時過ぎにようやく113.072円まで戻していますが、結局112円台でNYタイムを終えています。
オバマ政権最後の雇用統計に市場の関心は薄い印象
今回の12月「雇用統計」はオバマ政権最後の雇用統計となったわけですが、連日トランプ発言に振り回されている市場の関心はやはりかなり低かったようで、発表後NFPの数字がよかったことから113.389円まで跳ねたものの、そこからは下落してむしろ112円台の下値を試す動きが続いてしまいました。
ひとつ問題を感じるのは13万人程度から21万人程度までばらつきのある100社以上の事前予測を単純平均として17万人程度の事前予測と比較したよかった悪かったという金融村の月に一回のイベントがさしたる意味を持たなくなってきていることで、トランプ政権のもとで「FRB」はどのように振舞っていくのかもいまひとつよくわからない状況ですから「雇用統計」がこれまでのように注目される数値を維持できるのかどうかにもかなり疑問が出始めている状況です。
あくまでトランプ政権の政策が本格的にスタートしてから考えるということが垣間見られ、年の中盤となる6月ごろまではなにも動かない可能性も高く、この視点でみても「雇用統計」への市場の関心は薄まりそうに見えます。
政策金利と自国通貨高が連動しはじめたのは1995年以降
今では為替市場で通貨を発行する国の「政策金利」が通貨高に影響するのは当たり前となっていますが、1995年以前先進国でも政策金利が高めに推移していた時代には金利だけで通貨高にはならなかった時代がありました。
今回トランプ政権が目指しているドル高政策は実行すれど、自国通貨高は断固として阻止する政策が先進各国との二国間協定で現実のものとなれば、金利と通貨高が連動しなくなる可能性も出始めています。
つまり為替の世界だけでいえば「FRB」が利上げを進めてもドル円は上昇しないというこれまでにない状況が示現することも考えておかなくてはならず、そうなると益々雇用統計の結果というものへの関心が薄れることになることも考えておかなくてはなりません。
貿易赤字減少に躍起になるトランプ政権では貿易収支に注目か
トランプ政権ではとにかく「貿易赤字」に注目し、赤字の対象国を攻撃してドル安を示現させようとする動きを強めようとしていますから、今後は市場もこうした貿易収支のほうに注目を集めやすくなることが考えられ、米国の経済指標に対する見方もトランプの登場で大きく変化することが予想されます。
これまえで米国の貿易赤字はいわば常態化してきたわけですから、この赤字減らしに本格的に政権が取り組む姿勢を見せていることだけ考えても米国のやり方は大きく変化しようとしていることがわかります。
足元でもほぼ完全雇用が実現している中にあってトランプが国内に製造業を呼び戻す動きをとったとしても今後さらに雇用指数が短期間でよくなるとは到底思えず、むしろ最良の状態から悪くなっていくことも考えなくてはならないのがトランプ政権のスタートポイントとなっていることも忘れてはなりません。
どうやらこれまでにない新しい大統領の登場で、米国の経済指標に対する関心度も大きく変化しようとしていることだけは確かなようで、市場の注目がどのように変化することになるのかについても注意を払うようにしていきたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)