就任以来どこでドル安けん制を持ち出してくるのか非常に注目されてきた米国のトランプ大統領ですが、1月26日、米フィラデルフィアでの共和党上下両院の集会で演説し、今後の通商交渉には「通貨安誘導に対し極めて極めて強い制限を導入していく」と表明したことから市場の大きな関心を集め始めています。
今後日本などの「TPP」参加国とは一対一の貿易協定を締結することになりますが、この協定の中には通貨安誘導を監視する為替条項を盛り込む考えとみられ、一体どのような内容が具体的に締結されるのかがさらに注目されることになりそうです。
一体何をもってして通貨安誘導なのかが大問題
これまでこうした通商条約に通貨政策を制限するものというのは存在したことがないだけにかなり異例の国際協定となることは間違いなく、ある種の固定相場のような取り決めをするのか、単純に市場の影響で相場変動が起きても一切介入をしないことに取り決めるのか、実際の円安誘導とやらがどのような行為になるのかをいかに定義するのかが最大の問題になりそうです。
介入一切禁止ともなれば海外の投機筋が大きくドル円を売り込んでくることは間違いなく、もはやドル円は130円方向などには動かないことになってしまいます。
「TPP」の意義を再認識してもらうなどとおめでたいことを安倍首相は口にしていますが、2月10日の日米首脳会談はかなりクリティカルなものになることはほぼ間違いなさそうで、ここからはこの締結内容がかなり為替に影響を与えそうな状況です。
日銀の国債ゼロ金利釘付け政策は為替操作とみなされるのか?
ここでさらに問題になりそうなのが直接為替介入ではなく国債金利をコントロールしている日銀のオペレーションに関してです。
「FRB」との連携性は確保しているはずの日銀ですが、新たに大統領になったトランプとどのように折り合いをつけていくことになるのかは非常に注目されるところで、そもそも日本の政権とも独立性を維持している「中央銀行」が他国のトランプにとやかく言われて方針を変えざるを得ないとなれば大問題ともいえるだけに、そもそもけちをつけられるのかどうかから状況をチェックしていくことが必要になりそうです。
エモーショナルな発言に終始するトランプを納得させられるのか?
トランプの大統領主任からまだたった1週間あまりですが、市場は劇的に彼の発言に影響を受けるようになっており、非常に相場の先行きが見極めにくくなっていることは事実です。
QUICKがまとめた店頭FXの建玉状況によりますと、ドルやユーロに対する持ち高は過去最低を更新したものの、トランプ米大統領の就任にあわせて取引を手控えたのに加え、先行きもはっきりしないため、売買を手控える個人投資家が非常に増えているようで、投機筋だけが出てきては売りと買いを突き詰めて売買することから毎日のように大きな「ショートカバー」がでるという非常に特殊な相場環境になっていることがわかります。
ここから先、トランプがさらに論理性に欠けるエモーショナルな内容で日本政府に対して為替の是正などを迫ることになれば、当然為替相場もそれを嫌気した動きになるはずで、まだまだ先行きに不透明感が漂うことになりそうです。
とにかく2月10日に開催される日米首脳会談で二国間協定の中身がつまびらかになるはずですから、これをきっかけにしてドル円が大きく下押しするリスクがあることだけはあらかじめ理解しておく必要がありそうです。
メキシコに対するトランプの言いがかりのつけ方をみていますともはやそのやり口はめちゃくちゃの域に達しており、日本に対しても同様の手口を振りかざしてくることになれば相場はかなり荒れることになるのではないでしょうか。なんとも憂鬱な2月はいよいよ来週からスタートとなります。
(この記事を書いた人:今市太郎)