為替市場というのは実に身勝手なもので、同じ材料であっても相場のセンチメントがころころ変わるのにはさすがに驚かされるものがあります。そんな材料のひとつになりつつあるのがトランプ次期大統領の就任問題です。
昨年の11月9日からクリスマス前まではとにかく盲目的に上昇を続けてきたドル円ですが、年明けからはその動きが大きく変わり6日の「米国雇用統計」で上伸し、さらに9日に上昇を続けた分を同日のNYタイムであっさり吐き出して元に戻るといった激しい状況が続いています。
せっかく米国の利上げ期待が高まった相場でしたが、それを打ち消す材料となってきたのがトランプの記者会見であり、ハード「BREXIT」懸念からのポンド安もドル円の上値を大きく抑えるものになっており、さしたる大きな変化はないにも係わらず相場はいきなり「リスクオフ」へと変化してしまっています。
こんなに下げるなら元から上げるなと言いたくなる動き
6日の「雇用統計」の結果を好感してドル円が117円台に近いところまで戻して終わった新年第一週目の相場でしたが、週明けも東京勢が成人の日でお休みとなった中上昇を続け117.530円まで上値をつけてほとんど下がらない相場が継続することとなりました。
これはチャートを見ていますと結局戻り売りのショートが溜まりすぎてそれが原因で身動きが取れなくなってしまったのであろうと思いますが、ロンドンタイムからは崩れはじめ、クロス円などの下落も手伝って117円を割れてからは下値を大きく模索する動きとなり、NYタイムに入ってからは、「London Fix」後にとうとう116円を割り込む展開となり、その後も大きく戻せない中で10日のオセアニアタイムに入ったところで、仕掛け的な売りから115.697円にまで下落する動きとなりました。
相場には特別決定的な材料があったわけではありませんでしたが勝手に上げて勝手に下げるという展開になってしまったわけです。ほとんど大した材料もないままに上下2円も振幅されてしまうのは個人投資家にとってはかなり難しい相場になってしまっているといえそうです。
NYタイムの下げ加速は明らかにトランプの会見を嫌気したもの
結局ドル円相場がNYタイムで「リスクオフ」となってしまった大きな原因は11日に予定されている初の記者会見で、何が飛び出すかわからないことに異常とも思えるほど神経質な動きになってきているのです。
そこまでトランプの言動を心配するなら一体なぜ今まで一本調子に上昇を続けてきたのかクビを傾げたくなる動きではありますが、市場はやっと正気を取り戻してトランプの言動にリスクを感じ始めていることが見えてきている状況にあるわけです。
まあ11日といってもまだ就任前ですし、一般教書演説も控えているわけですから、前倒しで余分なことをしゃべりだすとは思いにくいタイミングではありますが、ここのところのツイッターでの発言などを見ていますと何が飛び出すかわからないという市場の心配はかなり強いようでポジションの手仕舞いもドル円の相場を大きく下落させる要素になっているようです。
実際の記者会見は聞いて見なければどうなるのかまったく見当がつきませんが、比較的心地よい内容の会見になればまたドル円は買い戻され、為替に対する指摘などや通常関係で強烈な持論が飛び出せばまた大きく下押しするという「ボラティリティ」の大きな相場展開が当分続きそうです。
こうした相場時期ではとにかく長くポジションを持つのはもってのほかであり、利益がでたものから順に迷わずリカクして実現益をしっかり積み上げていくことが肝要です。
またポジションを作った方向と相場の流れが変わるようであれば、躊躇なく一旦損切りして確信が持てるタイミングに再度入りなおすぐらいの臨機応変さが求められます。
足元のトランプ怯え相場は政権がスタートしてその政策の全容が見えてくるまでは当分続きそうな気配で、2月から3月に向けての為替相場は予想以上に難しいものになる可能性がでてきています。
(この記事を書いた人:今市太郎)