市場では緩和を続けて利上げを行わないつもりなのかという大きな疑問も投げかけられようになっており、新たに飛び出してきた難解な理論に市場は困惑し始めています。
「イエレン議長」によれば、力強い総需要と労働市場の逼迫を維持する、早い話が「金融緩和」でカネをバラまき、財政出動で景気を刺激することを、当面続けるしかないことを示しているようで、当然市場が気にするのは直前に迫った12月の利上げとの整合性の問題になります。
この高圧経済なるものを継続するのであれば、あえて12月になぜ0.25%ばかりの利上げを断行しなくてはならないのかが多いに疑問になりますし、なぜいまごろこんなことを言い出すのかがそもそも大いなる疑問ということになってしまいます。
ヒラリーの優勢に関係ある発言か
イエレンが民主党支持であることは広範に知られていますが、いよいよヒラリーが大統領選挙で優位に立ったということもあり、彼女が大統領として順調にスタートを切るために景気を冷やしたり、とりわけ株価を大幅に下げるところからスタートさせてはいけないという配慮が働いているのではないかというのが市場に見かたになってきているのです。
ここから年末年始に相場の大きな下落を示現させてはいけないという政治的な事情はわかりますが、果たして12月15日に0.25%の利上げを行った場合に、すでに市場は織り込み済みで一切の同様も相場の下落も起こらないのかどうかはかなり疑わしい状況で、とくに最近は事前の織り込みよりもことが起きてからの相場の動きのほうが激しくなる傾向にあるところも非常に気になるところです。
金融緩和の継続を高圧経済というなら日欧も既にやっていること
「リーマン・ショック」以降続いている長期的な停滞傾向から脱するには、この高圧経済を継続するしか方法がないというのがイエレン理論となるわけですが、よくよく考えてみれば日本も欧州もすでにこの手法は最大限とっているわけで、なんら長期停滞は解消に向かっていないのが現実です。
グローバル経済は放置しておけばすぐに「デフレ」に向かう傾向があり、この高圧経済理論も期限のない政策に見えて仕方がありません。
イエレンのハンドリングは実に判りにくいとの指摘も
市場では12月の利上げ観測をあえて後退させる意図があったのではないかという憶測が飛び交いはじめていますが、もう一方ではフィッシャー副議長がやるやる詐欺を連発して結局なにもできなかった9月の利上げが実施できなかった理由を説明したにすぎないという説も飛び出し、Fedウォッチャーの間では議論の分かれるところとなっているようです。
とにもかくにも市場に突然飛び出してきたこの高圧経済という言葉はなんらかの「FRB」によるここからの「金融政策」の意図が盛り込まれている可能性は高く11月の「FOMC」でもそれにかかわるなんらかのヒントが登場するのかどうかが非常に注目されるようになっているようです。
個人的な感想をいえば、とにかく判りにくいの一語に尽きる感があり、事ここに及んで利上げをするつもりがないようにも聞こえるイエレン発言は、市場に大きな混乱を与えるとともにまったくわかりにくい学者ならではの撹乱発言といわれても仕方ない内容だといえます。
昨年の12月「FOMC」では今年中に4回程度の利上げを見込んでいたわけですが、これも全く実施されておらず、「中央銀行」としての先見の明はまったくない状態です。
これで本当に利上げ年内見送りとなるとドル円は、かなりの勢いでドル安円高方向にまっしぐらになるリスクも依然残っていることだけは頭の片隅においておきたい状況です。
(この記事を書いた人:今市太郎)