東証や日銀などの発表をもとに、9月の東証の投資主体別売買動向を改めてチェックしてみますと、いかに今の日銀主導管理相場が不思議なものになっているかがよくわかります。
為替との連係性も薄れて、非常にわかりにくい東証の株価推移ですが、投資主体をみればその理由が非常によくわかる状況です。
このコラムは株のことではなく為替を扱っているわけですが、こうした日銀の管理相場は少なからず為替、とりわけドル円に影響を与えることが危惧されます。
特にむりやり作られた相場に投資家が払わされるツケは想像以上に大きなものになることが多くドル円にその被害が及ぶ可能性が危惧されます。
とにかくまともに買っているのは日銀だけのしょぼくれ相場
9月の東証が発表した投資主体別売買動向に日銀の「ETF」買いのデータをひとつにまとめてみたのが下記の表になります。
あらかじめ予想はついていたものの、とにかく日銀がせっせと購入する「ETF」以外は外国人も信託銀行も生保もすべて売り、売り、売りの相場状況で、11日には1万7000円回復となったものの9月の相場状況を見ると実にお寒い状況が今の数字を作り出していることがわかります。
とくに外国人投資家は1月を超える規模の売りを出してきており、その分を必死に日銀の「ETF」買いが買い支えているだけの危うい状況が続いていることがかわります。
特に外国人買いがでないことはヘッジでのドル円の連動買いが出ない元凶になっており、2013年や2014年の状況とは大きく異なることがわかります。
ドル円のレートは輸出系企業の業績に影響を及ぼすものだけに、まったく連動性がないとは言いませんが、ひところに比べればほとんど為替は株と連動しない時間帯が多くなってきているのです。
外国人売りは9月までの総計で6兆円超
1月から9月までの累計をみても外国人投資家は既に6兆円を売っており、2013年の年間15兆円の買いとはまったく状況が異なっていることがわかります。
個人投資家も7月から9月は一貫して売り向かっており、取引額が盛り上がらないのも当たり前の相場になっているということが理解できます。
「貿易赤字」もこれまで年間で13兆円近かったのが原油安と原発再稼動で減ってきていますから、ドル円の上昇支援材料が極めて少ないことに改めて気づかされる状況です。
今の管理相場方式では市場売買規模は小さくなるばかり
昨年暴落で大騒ぎした中国上海市場は、とうとう国家管理相場の様相を呈して政治的に相場が下がらなくなりました。
それだけ聞くとどうしようもない気分にさせられますが、示現している現実と行われていることを箇条書きにすると日本の市場もたいして変わらないのが現実で、さすがに株を売ったら逮捕されるところまでは行っていませんが、金融当局が異常に管理する株式相場は投資妙味が著しく薄れ市場参加者が減ることから商いがきわめて薄くなるのが特徴となっています。
実際上海市場の商い規模は最盛期の10分の1に縮減されており、東証の売買ボリュームが減り始めているのも実はこれに近い事情があるからであろうと見られています。
今後ドル円はますます実需の影響をうける
東証の株式市場、とりわけ日経平均との連動性が薄れるということは、ますます実需の影響を受けることになるのがドル円となりそうで、年末に向けて株価上昇というのもかなり眉唾であるとともにドル円も簡単には相場を戻さないことを覚悟しておくことが必要なようです。
また米国大統領が誰になってもドル安傾向にはさらに拍車がかかることは間違いないことから、ここからのドル円の上値も相当押さえ込まれることが予想されます。
これまでの動きからみれば、110円を超える方向に戻しても不思議はないように感じられますが、ここからの相場はかなり上値に期待ができなさそうな状況で、ドル円は悪い意味で日銀の影響を大きく受けてしまいそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)