8月26日のジャクソンホールにおける「イエレン議長」の講演と、それに並行したフィッシャー副議長のTVメディアでの年間2回利上げ発言を受けて、為替相場はドル高方向に跳ね上がる展開となりました。
6日に発表になった8月の「ISM非製造業指数」は51.4と予想(54.9)を下回り、全体的に前月から低下する中、特に新規受注が前回の60.3から51.4と、2013年12月以来の低水準に低下したことから、ドル円は一斉に売り込まれ「102円05銭」をつけるところまで下落することとなっております。
米国はもともと製造業のウエイトが低くなってきていることから、サービス業を中心とした非製造業の指数が安定していれば経済的にはさほど大きな問題はないとされてきましたが、他国に比べればかなりいい状況とはいえます。
しかし、米国の国内経済は決してベストな状況を示現していないことが明確になってきており、利上げのタイミングよりも利上げ自身を行えるかどうかに議論がシフトしそうな状況となってきています。
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8月労働情勢指数も悪化でいいところなし
「イエレン議長」お得意の労働情勢指数も8月は悪化しており、利上げはデータ次第ということになると、少なくとも9月の実施は完全になくなったといってもいいでしょう。
を見るかぎり急いで実現できるわけではないことがかなり明確になってきています。
またここから年間2回の利上げといった発言も、まったくそれをサポートするデータも登場しないままであり、メディアに登場してから2週間あまりで、その可能性は完全になくなってしまっています。
奇しくも今月のドル円も「雇用統計」直後がピークになり下落するという毎度おなじみのパターンを踏襲することとなり、12月利上げの可能性は依然として残るものの9月「FOMC」に向けてドルが大きく買われることはなくなったと見ていい状態です。
ドル円のテーマは日銀会合にシフトか?
9月21日に控えていた2つの大きなイベントのうちのひとつの可能性が薄れたことで、市場の焦点は「FOMC」から「日銀の政策決定会合」へとシフトしそうなところにさしかかっています。
104.500円や105円のオプションの履行狙いで買上げた海外のファンド勢も多かったようですが、「経済指標」のひとつふたつが悪化しただけで難なく2円近く値を下げる相場ですから、「日銀の政策決定会合」の内容次第では100円に逆戻りも十分にありうることを意識しておく必要がありそうです。
浜田内閣官房参与発言も円高に
一体全体この政権は「本当に為替を円安にしたいのか」思うような発言をしたのが「浜田内閣官房参与」で、この人物はたびたびメディアのインタビューで余分なことを言っては相場を冷やす役割を演じていますが、6日の東京タイムでも「FOMC」の前に「日銀が政策決定会合で動くべきではない。」と口にしたことからドル円相場は103円台後半から前半まで、一気に価格を下げることとなっています。
全体としては大した話ではないわけですが、足元の相場では「アルゴリズム」がテキストを読んで反応することから、それがどれだけ重要な内容なのかといったプライオリティ付けはまったくされないまま相場に反映されてしまうため、市場で要人と認識されている人物が余分なことをメディアに言うこと自体が大きなリスクになっているという点をもっと注意深くコントロールしていくべきではないかと思う次第です。
当面戻り売り対応がお勧め
ここからのドル円はそう大きく戻すことはないと考えられますが、103円以上にまで戻すことがあれば、やはり「戻り売り」で対応しておくことがお勧めとなります。
金曜日の深夜につけた104.300円の高値も戻り売りをしていたところ、たった2営業日で200PIPSの利益を確保することができていますから、下落で利益をとるのは非常に効率がいいディールとなっています。
少なくともドル円についてはここからどんどん上昇する材料は完全に失われてしまったことだけは確かです。
(この記事を書いた人:今市太郎)