しかし我々が今もっとも直面しそうな21日の最悪シナリオは実は別に用意されています。それは日銀の追加緩和もないし「FOMC」の利上げもないという「なにも起こらないシナリオ」です。
米国の株価下落がすべてを牽引するシナリオ
「ジャクソンホール」を終えて米国の株価は一旦下落こそしていますが、驚くほどの下げはまだ演じていませんし、29日の相場では100ドル以上の上げを示現させています。
しかしここから米国債とゴールドの先行した下落が米国株の下げを加速させる可能性は十分にあり、金利が上がってドルが買われることになっても、少なくともドル円はその動きにはついていかず株の下落に巻き込まれて円高方向に動く可能性が高くなります。
こうした動きが顕在化した場合、9月21日を待たずに為替も株も下落方向に動くことになりますが、米株の大幅な下落は当然「FOMC」により利上げを躊躇させることになりますし、必要とあらば「マイナス金利」の深堀も債券購入による追加緩和も辞さずという「黒田総裁」の緩和措置もどうなるかわからないことになります。
これで21日の日米の相次ぐ金融政策決定会合でまさかの何もでない現行維持が現実のものとなった場合、ドル円も日経平均もかなりの売り浴びせを受けることはほぼ間違いない状況に追い込まれます。
しかも翌日は秋分の日でお休みという恐るべき日程
今年の2月11日の建国記念日、日本がお休みの間に欧米勢の売り仕掛けでドル円が大きく売り込まれてしまったのは記憶に新しいところですが、実は21日の翌日は秋分の日で日本はお休みとなります。
売り浴びせを狙う向きにとっては実におあつらい向きの日柄となりますが、どのレベルで21日を迎えるか次第では、ドル円は95円方向に突き抜けて下落することも十分に考えられるというわけです。
米国の株式市場の動向に注目
日銀は既に7月に「ETF」の買い入れ倍増を決めており、それを粛々と実施している最中であり、確かに株価は大きく跳ね上がる状況ではないものの、為替の水準から考えれば1500円程度は高く推移しているわけですから、このタイミングで日銀が躊躇なく緩和をしかけてくるかどうかはかなり疑わしい状況といえます。
また為替については再三再四米国のルー財務長官が自国通貨安政策をとるなと警告していることもあり、ドル円のためだけに追加緩和を行うわけにはいかない事情も抱えているといえます。
「ジャクソンホール」では頼まれもしないのに妙に強気な追加緩和姿勢発言をしてみせた「黒田総裁」ですが、挙句の果てになにも出しこない代わりに、検証の結果はすばらしく、何に問題もないと自画自賛するだけでおしまいになるという驚くべき結末が登場することも十分にありえそうです。
現状ではもっともありうるリスクシナリオ
例年9月は何もなくても米国の株価が売り込まれる時期であり、足元の高値推移の相場も一旦下落が始まればそのスピードが加速することは十分に想定されます。
また米株が下がれば日本株が下がるのもお約束であり、「日銀の政策決定会合」を別にしてもここから円安が一気に進むことは考えにくい状況です。
したがって100円台に押し戻され場合にすべて現状維持となれば、それなりの下落は覚悟する必要がありそうです。このシナリオが現実のものになるかどうかは、9月に入ってからの米国債券市場、金市場に株式市場の動向を注視しているとある程度の予測がつくかも知れません。
実は米系のファンド勢はこのシナリオがメインになると思っているところも多く、それがドル円のショートを膨らませる原因にもなっているようです。
9月は「実需」のドル円売りも嵩む状況ですから上値を抑えることになればまたしても下方向へのリスクに対する方法を考える必要がでてくることになりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)