今年もまた夏の終わりにジャクソンホールで開催される「FRB」の年次経済シンポジュウムが開催されますが、今年は「イエレン議長」も会合に出席して講演を実施することから、利上げについて何を示唆するのかが注目されつつあります。
ただ、「イエレン議長」の場合には毎回玉虫色の発言をして、利上げについて言質をとられるようなことはしないため、むしろこの会合をめぐって各地区連銀総裁が示し合わせて発言する「タカ派」よりの内容や「ハト派」よりの発言などのも注目が集まります。
そこでしっかりと理解をしておきたいのが、「FOMC」メンバーで今年重要なのは誰なのか?またメンバー以外で重要と思われるのは一体誰かということです。
FOMCの投票メンバーについて
「FOMC」における投票は毎回10名によって行われています。そのうち「イエレン議長」、フィッシャー副議長、タルーロ理事、ブレイナード理事、パウエル理事と「FRB」の実質オペレーションバンクになっているニューヨーク連銀のダドリー総裁は固定の常任メンバーとなります。
そして残りの4名は毎年入れ替えとなるもので、2016年はブラードセントルイス連銀総裁、ジョージカンサスシティ連木総裁、メスタークリーブランド連銀総裁、ローゼングレンボストン連銀総裁が投票権を持っています。
それ以外の連銀総裁はそれなりにメディアでの知名度はありますが、今年の利上げの投票権は直接的にはもっていないことから、利上げ前倒しのようなタカ派発言が飛び出してもそれほど相場には影響しないことがわかります。
ダドリー発言で相場は急上昇
今年のメンバーは総じて「タカ派」が多いとされていますが、先日も夏休み期間中にドル円が売り込まれた際も常任メンバーであるダドリーNY連銀総裁が「9月に利上げがなくなったわけではない。市場は甘く見ていると」いった発言をした際にも為替市場は大きく反応し、あっという間に99円台中盤まで下押ししたところから1円以上をものの1時間ちょっとで戻すことになりました。
それだけ常任メンバーの発言は市場に大きな影響を与えることになるのです。
またダドリー氏はかなり「イエレン議長」、フィッシャー議長と近しい存在とも言われており、玉虫色発言の「イエレン議長」の代わりに市場にインパクトのあることを言い放ってみて、その後の反応を見ているとも言われる存在なのです。
ウイリアムズSF連銀総裁はイエレンの弟子
投票権がないのに話題にはるのは「GDPNOW」などで的確な経済分析を行うと評判のアトランタ連銀総裁やリッチモンド連銀総裁などですが、さらにウイリアムズサンフランシスコ連銀総裁の発言もたびたび注目されることになります。
このウイリアムズ総裁は「イエレン議長」がサンフランシスコ連銀総裁だった当時の直属の部下にあたる存在で非常に近い発想を持っているとも言われ、彼も「FRB」の方向感を代弁する存在として注目されているのです。
特に8月の15日に発表したレポートでは、米国通貨を「インフレ」通貨としてあえて高い「インフレ」状態にさらしてドル安を作り出すといったことが感じられる内容を発表していることから、いよいよ「FRB」が本気でドル安誘導に動くのではないかと注目されているのです。
本来「中央銀行」は為替のレベルについては公式的には見解を出さないのが基本ですが、「FRB」自体がドル安政策に乗り出すとなるとかなり市場に与える影響は大きくなりますし、なによりドル円はこの先大きく円高にシフトせざるを得なくなってくることから注目されることになるわけです。
ここから26日までは実に様々な「FRB」メンバーのノイズレベルが高まることになりそうですが、名前がでたらこのメンバー表の中の人間かターゲット以外かをまずチェックして、その中身を聴いてみるとさらに役に立つのではないかと思います。
セントルイス地区連銀のブラード総裁、カンザスシティ地区連銀のジョージ総裁、クリーブランド地区連銀のメスター総裁は一般に、物価を重視する「タカ派」とみられています。
これに対しボストン地区連銀総裁のローゼングレン総裁は一般に、景気を重視する「ハト派」とみられています。
全体としてはかなり「タカ派」色が強いものの、それでも利上げペースは速まらないというのが市場の共通した見方となっていますので、それに反する発言のノイズが非常に高まることになると9月以降の利上げペースに変化がでることを示唆しているとマーケットが理解する可能性もでてくることになります。
(この記事を書いた人:今市太郎)