前週米国の「雇用統計」がよかったことを好感して、リスクオンとなった相場はドルが軒並み利上げ期待から上昇し、ドル円もショートのあぶり出しから102.652円まで上昇することとなりました。
株価も大きく戻していることから、ここからは上方向なのではと思われる方も多いことかと思います。しかしこの動きを大きく抑制する存在が「実需」の指値による売りポジションになってきています。
トヨタの社内レート102円が影響か?
先ごろ「トヨタ自動車」が、今年後半の社内レートを「102円」にしたと公表したことが市場では注目されています。
直物のレートに銀行からのコミッションなどを足しますと、12月というここからの最長の時点で、102円の為替予約を作るためには、銀行のマージン設定がさまざまにあるので一概には言えませんが、102.700円から上に売り指値をおいておくことが必須となってきており、8日の晩も102.700円の手前ではしっかり止められていることが確認できます。
輸出系企業がどれだけトヨタに習っているのかはわかりませんが、実際に相場は100円に近いところをさまよい始めており、102円アベレージというのも現実の問題になろうとしています。
したがって、ここから少しでも上のほうに相場が上昇すれば、多くの輸出企業が売りを持ち込んでくることは間違いない状況になりつつあります。
特にお盆シーズンは一週間という長期の休みに入る製造業も多く、この休み期間中にはドル円の上のあたりに多くの企業が指値を売りをおいて休むことになりますから、よほどのことがない限りは上方向に突破していく可能性は低いと見てよいのではないでしょうか?
また指定した金額で売れなかった企業は、休み明けにそのレートをさらに下げて売りを出してくることが考えられ、ここから先の相場は「実需」がブロックすることが考えられます。
現実的な問題として、105円を想定しても既に簡単には為替予約を確保できない状況になろうとしていることが、輸出系の「実需」を焦られているともいえます。
実需は全体取引の10%程度~でも威力は絶大
為替相場での取引では「スワップ狙い」が全体の50%程度で、個人を含めて為替を売買して利益を上げる「投機筋」がほぼ40%、「実需」は10%程度となっています。
しかしながらこの中で買いにしても売りにしても、反対売買を行わないのは唯一「実需」だけですから、多くの実需がこのドル円のように一定のレベルで売りを指してくるようになると、相場の動きは大きくブロックされることになり、その威力は想像以上のものになってしまうのです。
もちろん為替相場のことですから、ここから103円以上には絶対上がらないとはいえませんが、上に行けば行くほど「実需」の売りがでてくることになりますので、予想外の高値がでたときには、とりあえず売って様子を見てみるというのがお勧めとなります。
お盆休み期間中は短期投機筋の叩き合いも・・
気をつけなくてはならないのは、夏休み期間中市場に登場するのほとんどが短期の投機筋で「アルゴリズム」を用いたところも多くなります。
市場の動きを左右する「実需」も大きな資金を動かす機関投資家も不在ですから、こうした短期売買勢が上げたり下げたりする相場の繰り返しを行いますが、たいがいは同じ短期投機筋の中の叩き合いになることが多く、必要以上に上げてみたり下げてみたりの繰り返しになります。
個人投資家がこうした中でポジションを持ちますと、「アルゴリズム」間で繰り返される、投げと踏みの応酬に巻き込まれて必要のないところで大きな資金を失い散々なお盆をすごすことになりかねません。
適当な相場感だけで買い向かったりせずに、ここは高値になったら売るといったような徹底した仕込売買に徹することが重要になりそうです。
本来「閑散相場に売りなし」で、大きく下げにくいのが休みの期間中の為替市場ですが、なぜかドル円は8月トータルでは円高に振れがちになります。
したがって投機筋の叩き合いから相場が万が一上昇するようなことがあれば、絶好の戻り売りと見ておくことが月後半の利益を確保するためにも有効に働きそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)