「ETF」ほぼ倍増の6兆円だけを追加緩和に持ち出して、為替市場サイドの期待をかわしつつも株価の下落だけは抑えて政権からの強力なプレッシャーに最低限の対応をおこなった29日の「日銀政策決定会合」の内容でしたが、今回非常に驚いたのは、サプライズしかやらない、市場との対話を全く重視しない「黒田日銀」が次回の政策決定会合の内容に言及するといった方針を打ち出してきたことにあります。
市場に対して予告編を登場させるというのは実に珍しいことといえ、宗旨替えの思惑の中身が気になるところです。
もはや打つ手なしと自らの口でつぶやけばすべてはおしまいですから「アベノミクス」がまだ続いているかのように振る舞うしか手がない状況に追い詰められていることは見ていればよくわかることです。
今回の決定は「国債」の増枠も「マイナス金利」の深堀も闇雲に行えば材料出尽くし感だけが際立ってしまうことをもっとも自覚しているのはだれあろう日銀であることを強く印象づける政策決定内容であったと思います。
その一方で「黒田日銀総裁」は「マイナス金利」付き量的・質的金融緩和(QQE)の「総括的な検証」を執行部に指示したことを明らかにしており、その結果を次回の政策決定会合に生かしていくことも示唆している点にマーケットは大きな関心を示し始めています。
目標は引っ込めないが方法論を大幅修正か?
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会見の席上でもいつまでたっても達成のめどが立たない「物価目標2%の達成」は変更しないことを強調しまくっていた「黒田総裁」ではありますが、どうやら「金融政策」の限界を自ら感じた結果としてその手法を一部引っ込める可能性がでてきているようです。
たとえば「国債」の購入枠での議論から保有シェアを高めることへの変更や金利目標だけに的を絞るといったことも考えられるようです。さらに「国債」に限らず政府保証債、財投債、地方債の買い入れも選択肢に入れてくる可能性が高まっているようです。
実際財投債を買い入れるようになれば事実上の「ヘリマネ」に近い効果があり、2日発表となる政権自称の大型経済対策でも原資がどこからでてくるのか不明の内容が結構盛り込まれることになりそうですが、この不明部分もかなり日銀が解消することになるのではという憶測がではじめています。
しかし短期的には実質的な「ヘリマネ」期待ということで結構ドル円は9月に買いあがる可能性もでてきているといえます。
マイナス金利は結局引っ込めるのかも
今回ろくな内容ではなかった政策決定会合の結果ですが「ETF」の買い入れだけ行い「マイナス金利」を深堀しなかったことを株式市場は好感し、とくに金融株が上昇するという案の定の反応がでています。
MUFGが「国債」入札のプライマリーディーラーからステップアウトしたことも含めて日銀は「マイナス金利」の旗を降ろす可能性もでてきているといえます。これもまた一時的ではありますが、市場には好感される可能性がでてきている状況です。
ただ、こうした枠組み変更は「中央銀行」主体のバブルの終焉を強く示唆するものにもなりかねず、出口戦略に近づく内容でもないことから総合的に市場がその結果をどう評価するかが気になるところです。
枠組みを変えてもすでに材料出尽くしと判断されれば、日本売りが進むことも十分に考えられますし、秋口からは米国の大統領選挙選が激化することから、ドル安が一段と強まれば相対的に円高が示現することは避けられないとの見方もあり、9月の「日銀政策決定会合」には大きな注目があつまることになりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)