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6月24日以降主要通貨に対して大きく下げたポンドでしたが、ここのところ当初の「ショートカバー」以上に強含む場面が多く、東京タイムでポンド円が結構動くのが不思議な印象でした。
どうしてこうした動きがでるのか？なんとも不可解な二週間程度を過ごしてきましたが、昨日発表された「ソフトバンク」の「M&A」でその謎が判明した次第です。それは英国ARMの買収子会社化の動きがあったからなのです。
ソフトバンク、英ARMを3.3兆円で買収
Photo Cnet
ソフトバンクグループは18日、英半導体設計「ARMホールディングス」を約240億ポンド（約3.3兆円）で買収すると発表しています。
あらゆるものがインターネットにつながるIoT時代を見据え、同領域に強みを持つ同社を買収することで需要の取り込みを目指すというのがその目的で、ARMは半導体の設計はしても製造は第三者にお任せのいわゆるファブレス企業で、まさに知的財産権の巨額の買収資金を投じるということなるわけです。
これによりARMは上場廃止となり、完全にソフトバンクグループの子会社となることが決定しています。
日本企業による海外での「M＆A（合併・買収）」としては過去最大規模であると報じられたことから、18日はポンド円上昇しましたが、実はこうした買収はほぼ資金が確定したところで発表されることが多く、7月のポンドの最安値あたりから既にポンド買いがはじまり、既に完了している可能性は極めて高いといえます。
言われて見ますと7月の「雇用統計」結果で一瞬ドル円が沈んだのにあわせて下落をしていますが、そこからは順調に戻しており、それなりに「ショートカバー」が進むものなのだと理解しておりましたが、実は裏側で「ソフトバンクの巨額なポンド買い」が進行していたことがわかります。
報道によるとアリババ株の売却資金なども使われているようですから、円からドル経由でポンドにするというよりも保有している米ドルからポンドに転換した可能性が高く、ポンド円はそれに引きづられた動きとなったのではないでしょうか？
いずれにしてもポンド円とポンドドルは極めて似た動きをしていますので、ポンド円が影響を受けたことは間違いなさそうです。
ここからはドル円上昇の支援材料がひとつ減る？
昨日あたりに慌ててポンド買いをした本邦投資家も多かったようですが、東京タイムではすでにポンド円は139円台半ばまで下落していますので、どうやらソフトバンクネタで大きく買いあがる可能性は低くなっているようです。
ソフトバンクはスプリント買収のときにも為替で大きな利益を出しながら円をドル転していますので、今回のポンド買いでも相当いいタイミングに売買をしたことは容易に予想される状況です。
本邦企業ではサントリーのように買収を決めてから、事務のおねえさんと思しき担当者が事務的にドルをだらだら購入するといった全く戦略性のない為替オペレーションをやる会社もありますが、百戦練磨ソフトバンクグループは今回もかなりうまく立ち回ることができたのではないでしょうか？
孫さんの場合、投資全体に対する嗅覚があることと、ゴールドマンなど旧投資銀行出身者をファイナンス系の投資関連で何人も雇用していることから、どの企業よりも投資のタイミングとそのオペレーションに長けており、通常の日本企業にはない大きな強みを持っていることがわかります。
「M&A」のための資金調達となると買いきり玉になりますから、上がれば簡単に下がらないという特別な動きをするわけですが、ポンドに関してはこうした動きは一旦終了することになりそうです。
8月4日には次回MPCでまたしても利下げが予想されますので、ここからは戻りをしっかり売りながら様子を見る相場展開になりそうです。
こうした話も先に知っていれば儲けのいい材料になるものですが、残念ながらそうは問屋がおろさないのが「M&A」オペレーションの世界ということになります。
（この記事を書いた人：今市太郎）
