8日に発表となった「米国の雇用統計」はかなりいい数字になったにも係らずドル円は大きく戻ることができず「101.500円」すらもタッチしないまま下落し100円を切るという粗い値動きになりました。
しかしその後は持ち直して100.900円に近づく時間もあり、NYタイム後半はさすがに下落して100円台中盤で週末を迎えました。
この動きを見ていますとやはり方向感があるわけではなく、多くの市場参加者が戻り売りを試していることがわかります。
そうかと言って今の材料だけでここから100円台をどんどん下落していくようにも見えず、判断が難しくなってきています。今回はテクニカル的にドル円の今後を考えて見たいと思います。
相場は下向きであるが緩やかな下落
21日の日足「ボリンジャーバンド」をみていくことにします。
5月30日に111.400円という今から思うとかなり高いレベルが+2σで抑えられて以来ドル円は下方向に動いており、106円が再度崩れたあたりからは-2σをバンドウォークして落ちてきて、6月24日で-3σを突き抜ける形となったことがよくわかります。
その後は一旦103円レベルまで戻しましたが-1σを突き抜けるかどうかの攻防戦をやりながら先週末までこれを超えられずに継続して下落していることがわかります。
13日移動平均のRSIでみますといいところまで落ちてきていることがわかりますが、ここからさらに-2σにそって下落のバンドウォークをしないとは限らない状況になってきています。
ただ、やはり大きく下落するためにはなにか明確な材料が必要なことも確かで、何を材料視するかが大きなポイントになりそうです。
市場では7月の利下げは75%程度織り込み済みであり、8月も連続利下げして「ゼロ金利」に持っていくのではないかとの見方も強まっています。
「ECB理事会」も21日に開催され、ここでもBREXIT関連での追加緩和が期待されています。
その後は26,27日に「FOMC」が開催されますが、ここでは何も出てこないことはほぼ間違いなく、9月の利上げも今後の指標次第ということで動く材料にはなるとは思えない状況です。
そして29日に「日銀の政策決定会合」の「政策金利発表」が行われますが、株式市場を中心にして異常とも思えるほど緩和期待が高まっていますので、これが今回も現状維持であったり期待以下の内容であれば売り場になる可能性は十分に考えられます。
ただ、この3つのイベントで今ドル円に大きな影響を与えるとすればポンドであり、14日のMPCがもっとも下落要因となりやすいように思われます。
今回一回でポンドが大きく下落するとは思えませんが、ドル円ではここ数ヶ月で120円に迫る下落になる可能性は十分にあり、直近の相場ではこのポンド円の下落がもっともドル円の下落に影響を与えそうに思われます。
「ECB」の追加緩和もユーロ円などのクロス円がドル円を下押す可能性がありますが、ポンドに比べるとそのインパクトはそれほど大きくなさそうです。
97円を下抜けると介入リスク上昇
ここからはどのような下落の仕方をするかですが、97円を下抜けていくと、あまりサポートラインがなくなりますので通貨当局が「介入」に出る可能性は高まります。ただ毎日ずるずる1円程度下げていく場合には「介入」すらできないまま97円に到達することも十分に考えられます。
一方上値のほうは益々重くなっていますが、ここ1ヶ月程度の動きを見ていますと、まず-1σまでは戻っていますので101.700円レベルまでは戻っても全くおかしくはなく、センターラインまで戻すことになれば103.700円レベルということになりそうです。
まだここからは判りませんが、ひょっとすると100円~最大105円レベルでレンジ相場を形成する可能性もあり、ドル円自体が主体的に動かない相場が長く続く可能性も考えられます。
日銀が月末どのような対応をするか、何を出してくるかにもよりますが、105.500円レベル、つまり現状での+1σ以下の動きになるとまたしても下値を狙いに行くことが想定されます。
こう見てきますとドル円自体は主体的に動く通貨ペアではなく、この夏は他の通貨の影響を受けて下落しやすいことになりそうです。
ただこの夏は想定外のことで大きな下落を受けることも十分に考えられます。買いならばストップロスをしっかり入れておくことが必要ですし、大きく戻したときにはとにかく一旦売りでポジションを保有するというのも得策です。
(この記事を書いた人:今市太郎)