米労働省が発表した5月「雇用統計」は、非農業部門雇用者数は前月比+3.8万人と、市場予想+16.0万人を大幅に下回りマイナスとなりました。
これは実に2010年9月来の低水準となり、市場の予想をはるかに下回る結果となってしまいました。
4月分は16万人から12.3万人からへ、3月分は20.8万人から18.6万人へ下方修正されています。
2か月で5.9万人下方修正されており、あまり芳しい状況とはいえません。今回の雇用統計では大手電気通信事業者であるベライゾンのストでおおよそ3.5万人が影響すると事前から言われていましたが、依然10万人割れで弱い結果になっていることがわかります。
一方、失業率は4.7%と予想を下回り、2007年11月以来で最低を記録。平均時給は前月比+0.2%と、予想通り4月+0.4%から伸びが鈍化しています。
これを受けて市場では6月の利上げ期待が完全に剥落し、ドルは円についてもユーロについても大きく売られることとなりました。ドル円はこの原稿を書いている時点ではまだ107円台に残っている状況ですが、週末108円50銭レベルで終えることは難しく、週明けはまた売りからスタートしそうな気配です。
久々に大きくぶれた雇用統計結果
「雇用統計」の結果が大きくぶれるのはこれまで伝統的なものですから、それほど驚くほどのことではありませんが、米国の完全雇用というのはアルバイトも入れた雇用体系であるため、日本の国内でイメージする完全雇用とはかなり状況が異なるものであり、素晴らしく経済状態が改善しているとは、なかなか言いがたいものがあります。
6月は材料がひとつひとつネガティブに転ぶ展開
6月の為替相場は実に材料が豊富で、ひとつひとつのイベントごとに相場展開が変わることに気をつけるべき状況です。
まず、安倍政権の消費増税延期によって、海外の「投機筋」は大きく売りで臨む展開となっており、雇用統計の前までに111円44銭レベルから108円50銭割れまで東京タイムで示現し、雇用統計で107円割れすれすれのところを彷徨っていますので、既にこの段階だけでも4円以上の下落と見ており、相場は想像以上に激しい動きになっています。
109円の滞空時間も短かったわけですが、108円、107円を下落するスピードもかなりのものであり、週明け再度105円台を試す可能性も高くなってきています。
6月は国内の政治イベントを背景としてドル円も株も一旦上昇し高値を見たところで下落するものと思われましたが、どうやらそうした動きにはならないことになりそうです。
これで「FOMC」の利上げがないとなれば、市場の注目はいよいよ英国のEU離脱に注がれることになり、一層激しい相場の上下に見舞われうことになりそうです。
どうも想像以上に相場は荒れた展開となりそうで、利益がでたポジションはその都度しっかり利確して影響を受けないような取り組み方が必要になりそうです。
英国のEU残留が決まれば株もドル円も一旦上昇か
今のところ英国のEU離脱の可能性の話が俄かに市場を覆うようになってきていますが、これで残留が決まった場合には株も上昇し為替もドル円は上昇傾向になることが予想されますので、ここでは動きが逆さまになることもしっかり想定しておく必要があります。
すべてがネガティブに動かないことも考えておかなくてはなりません。こうした相場状況ではチャートがなかなかうまく機能しないのが実情となりますが、唯一サポートラインやレジスタンスラインはドル円でもかなりしっかりワークするようになっていますので、諦めずに常にチャートでのチェックで裏づけをとる習慣もつけておきたいところです。
完全に個人のレベル感だけで売買すると結構危ないのがこの6月相場です。
(この記事を書いた人:今市太郎)