最近なにかと話題のブルームバーグですが、米国の4日債券王として市場で一目をおかれてきたジャナスキャピタルの「ビル・グロース」が債券購入による量的緩和の第四弾~QE4が向こう1年ほどで始まる可能性があると発言している記事が掲載されたことから注目を浴びています。
実際債券相場のディーラーは、かなりこうした緩和措置の現実性を織り込み始めているといわれ、一体米国の利上げがこの先どうなるのかをめぐって市場の見方から相場が上下することも予想されはじめています。
「ビル・グロース」は「米金融当局による新生量的緩和に備えるべきだ」とし、「金利はより長期にわたり低水準にとどまり、資産価格は人為的に高い状態が続く」とも述べています。
当然こうした「QE」が復活するとなれば米国の利上げは後退することになり、ドル安の支援要因ともなることからまずは6月の利上げがどうなるのかが気になるところです。
Photo WSJ
相変わらず地区連銀総裁の発言で上下するドル円
為替相場では、ドル円は6月の「FOMC」まで地区連銀総裁の利上げ前向き発言や慎重発言に振らされる展開が続きそうで、6日の「雇用統計」も数字がよくなかったにも関わらず、利上げ発言が地区連銀総裁から飛び出すとすぐに買い戻されるといった方向感のない相場展開が続いています。
株価は利上げの後退に非常に敏感であることから、6月の利上げが見送りとなると大統領選挙が終わるまで実施がない可能性もあり、実質的に今年の利上げはもうないという観測まで飛び出してくることからこの6月に利上げがどうなるのかが非常に大きなポイントになりそうです。
イギリスのEU離脱が微妙になれば6月は即見送りか
6月の米国「FOMC」日程は、14,15日となっていることからイギリスのEU離脱の事前世論調査がかなり微妙になったり離脱優位といった報道が「FOMC」直前のタイミングで飛び出すことになれば臆病な「イエレン議長」は当然6月の利上げを延期する可能性がでてきます。
したがって投票の差し迫ったイギリスの状況も今回の「FOMC」には大きく影響を与えそうな状況です。
ユーロも対ドルではイギリスの離脱問題にはっきりとした決着がでないかぎり上値は重い状態が続きそうで、為替相場は全体的に方向感のよくわからないところにさしかかっていることがわかります。
また、これまで注目から外れてきたものの、5月に入ってずるずる値を下げはじめている中国の株式市場の動きにも関心が高まりそうです。
すでにこのコラムでも掲載していますが、中国は債券市場の様子もおかしくなりはじめており、冷静な視点でみれば米国が6月に利上げをするようなタイミングではないとの見方も強いことから、6月利上げはまさに外的な要因にも相当気を使うことを余儀なくされそうです。
利上げ後退と緩和期待が高まれば米国株式相場は再浮上も
「ビル・グロース」の予測がどこまで当たることになるのかはわかりませんが、利上げの後退が明確になり、しかも債券市場主導で緩和期待がさらに高まるとなれば、株価の上昇には大きな支援材料となることからダウの動きにも大きな影響を与えることになることは必至です。
5月後半から6月にかけては今のような相場展開が引き続き継続する可能性もあり、大きな動きを期待することはできないのかもしれません。
そんな中で米国は完全に自国の通貨安を強く志向するようになっていることが明確になってきています。日本の財務大臣がなぜドル高けん制と介入に対してここまで強気の発言を繰返せるのかよくわかりませんが、米国サイドはさらにドル安を進めていくことは間違いなく、円がドルに対して円安に動く要因はほとんどなくなってきてしまっています。
5月末のサミットを終えるまでは下押しも限定的と思われますが、大きく動きだすまでは当分我慢強く相場を見守ることが必要になりそうな数週間です。
(この記事を書いた人:今市太郎)