米財務省は4月29日、貿易相手国の為替政策を分析した半期レポートを発表しています。
その報告書の中で、多額の対米貿易黒字を抱える日本、中国、韓国、台湾、ドイツの5か国・地域を新たに「監視リスト」に初めて加え、為替政策を重点的に分析していく考えを示しました。
これまで中国は何度もこのリストにノミネートされていましたが、実際に監視リストに入ったのは始めてのことで、さらに日本については、円相場の動きが「秩序を保っている」として、為替介入をけん制する内容になっています。
まさに先日の「G20」ワシントン会合でルー財務長官が指摘した内容をそのままトレースする形でレポートに加えた格好になっています。
28日の日銀の追加緩和を見送らせたのはこれが原因か?
こうした内容が報告書に織り込まれることは、当然外交ルートを通じて日本も知っていたはずで、表向きの理由はどうであれあからさまに株高、円安を煽動する追加緩和をあえて日銀が見送った理由はここにあったのかもしれません。
冷静に考えてみれば、伊勢志摩サミット前で、しかもこうした報告書が飛び出してくるタイミングにあえて緩和措置を投入するリスクを役人出身の「黒田総裁」が強く感じた可能性は高いはずです。
もともと大蔵省で財務官として「為替介入」に絡んできた黒田氏は介入のたびに米国にお伺いをたてていた兆本人のはずですから、米国に必要以上の不快感を与えることに躊躇してもなんら不思議はありません。
先出しの緩和措置で伊勢志摩サミットにむけて選挙対策だけから、利上げ延期や凍結などを出されては2014年10月末のまさかの増税延期に次いで二度目の梯子外しになることになりかねないとの判断が働き、これだけ市場が緩和期待してもあえて何も行わずに相場が暴落したのは、暗黙の政権へのメッセージとなっている可能性も否定はできません。
3日、4日がドル円暴落祭りのクライマックス
しかしこうした米国財務省による日本の開始リスト入りは、ドル円を売り込もうとする「投機筋」の実に心強いサポートとなっていることは間違いありません。
日本時間30日の早朝に既に1ドル106円20銭台まで下落したドル円相場は、一応月曜日にそれなりのショートカバーを出したとしても、完全に本邦勢のいなくなる3日から5日にかけて下落のピークを迎えそうな状況になってきています。
6日には日本の市場が開き、米国の「雇用統計」があることを考えれば3日、4日に大幅下落を狙い、5日のロンドンタイム以降でショートカバーしてみせるというシナリオは誰でも考えつきそうなものです。
このコラムを書いているそばから相場がずるずる下落していますので、もはや105円は目と鼻の先に差し掛かってきています。
105円切れで一気に100円まで行くとはなかなか思えませんが、28日の朝まで111円台後半の相場であったことを考えれば、この連休の数日で100円に極めて近いところまで下落しても、それほど大きな不思議ではなくなっていることもまた事実です。
ただ、こうした相場の下げ方をしてしまいますと「中央銀行」がむりやり下駄をはかせて持ち上げた相場の下駄の部分を除いた、本来の適正レベルというものは一体どこにあるものなのか実に悩ましい問題を感じることになってしまいます。
また米国は大統領選を控えて明確にドル安を打ち出してきていることは明らかで、場合によってはドル円が100円を切れても国内の金融当局は口出しができない可能性もではじめています。
とにくもかくにも様相が一変してしまったのが足元の為替相場であり、特にこのゴールデンウイーク週には信じられないことが起こることもありえそうな状況となってきています。
(この記事を書いた人:今市太郎)