米国ワシントンで14日から開催されていた「G20」財務相会議は閉幕し、前回2月の上海会合同様に、各国が財政・金融・成長戦略をフル出動し停滞しつつある世界経済の成長を確保するとの共同声明を採択しています。
なぜ増税に米国のエンドースが必要なのかはよくわかりませんが、日本が増税を延期することについては、どうやら米国のお墨付きをもらったようです。
為替市場が注目していた「介入」絡みの円高調整に関しては、競争的な切り下げをしないとの総論で一致したものの、ルー米財務長官が日本に対して切り下げで「クギをさす」など、日米の温度差が浮き彫りとなったことから、ドル売り円買いを目論む短期「投機筋」にとっては米国の支援が得られる形となり、これを受けた週明けからの為替相場の動きが注目されることになります。
日米の蔵相で為替に関する認識は猛烈に乖離
「ロイター」の報道では日米に温度差という表現がされていますが、実際のところルー財務長官が口にしている内容は麻生大臣が記者団に語っている内容と大きく乖離しています。
ルー長官は「円高無秩序でない」「日本は切り下げ回避を」と明確に語っており、これではおよそスムージングと称する大幅下落を一時的に止めるような「介入」もできなければ、日銀による「QE」も実施が難しいところにさしかかっていることを明確に示唆する状況となっていることがわかります。
一方、麻生太郎財務相は、急激な円高進行について「一方的に偏った動きに強い懸念」を示し、
・「過度の為替変動に対しては、今回の共同声明に沿い、適切な行動を取る」
・「為替市場の動きが急すぎる点についてはルー米財務長官と意見が一致した」
などと記者団に話していますが、ルー財務長官が直接的にメディアに口にしている内容から考えればこのレベルでの「介入」などは全く絶望的であり、円買いを進める外資系「投機筋」にとってはかなり大きな支援材料になってしまったことは間違いなさそうです。
週明けからは再度ドル円下値模索再開か
普通にしていても国内の「PKO」軍団が株を買い上げる以外には上昇支援材料の乏しいドル円ですが、市場で懸念されていた日本政府による「介入」の可能性が米国により完全に払拭されてしまったことから100円を大きく割るような事態に至るまで、実質的に日本の金融当局は円高に歯止めを打つ手立てをすべて失ったとみなされ、週明けからドル円はさらに下方向を模索する第二ラウンドに入る可能性がでてきました。
7日以降2度107円台中盤抜けを試しに行ったドル円は、意外に固い「107.500円」のバリアに跳ね返されダブルボトムをつけたチャート形状になりました。
しかし、110円突破もかなり難しく何度かトライして15日の東京タイムで109.725円をつけたのが最高で、その後NYタイムでは深夜1時半すぎに「108.597円」まで実に1円10銭以上も下落を演じることになってしまいました。
17日に開催された加盟国と非加盟国の原油増産凍結をめぐる会議は結局増産凍結の合意には至らず、ここからは絶好の戻り売りチャンスが到来することになり、4月28日の「日銀政策決定会合」の前に下方向に突っ込んでいく可能性も出てきています。
本日、18日早朝の「オセアニア市場」では既に107円に突っ込む場面もあり、どうやらドル円の戻りは先週で終了のようです。
投機筋はドル円のショートをさらに増加中
米商品先物取引委員会(CFTC)が15日発表した12日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル 取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)のドル円のショートは6万6190枚と前回の6万73枚から6117枚増加しています。
また、 ユーロドルのショートは5万2051枚と前回の5万3487枚から1436枚減少しています。この12日は2回107円台中盤まで突っ込んだあとの話ですから、多くの「投機筋」はこの下げで全く達成感などを感じていないことがはっきりとわかります。
しかもこのショートの溜まり具合は実に1992年以来の水準ということで、「投機筋」の円買い意欲は並々ならぬものがあることがはっきりとわかります。
4月後半にむけてはさらなる円高に注意が必要ですし、28日の「日銀政策決定会合」後ゴールデンウイーク期間中に大きく売り込まれる危険性も高まりつつあることを認識すべきです。
(この記事を書いた人:今市太郎)