「2月26日」と言われても今の日本人のほとんどは何も思い出しませんが、この日は1936年に有名な、「二・二六事件」が起こった年でした。
1929年に起きたNY発の世界恐慌の影響を受けた深刻な不況を引きづった日本は社会的に暗い空気が蔓延した時代となっていたわけですが、当時の陸軍は、「皇道派」「統制派」という派閥に分かれて険悪な雰囲気があったとされています。
皇道派は、精神論だけで何もしないという状況に苛立った現場の青年将校達が「我々が行動を起こして天皇陛下の回りにいる重臣を殺し昭和維新を起こそう」と計画したのがこのクーデターの始まりです。
皇道派の青年将校が多かった陸軍第一師団の満州派遣が決定したことから、満州に派遣されたら昭和維新など起こせないと焦った青年将校たちが、2月26日に行動を起こしてしまったのが二・二六事件であったわけです。
この事件の詳細はネット上でもいろいろ書かれていますので、ご興味のある方はお読みいただきたいと思いますが、1937年というのはこの年の翌年にあたり、米国では2015年よりもはるかに景気が回復した時期となっていました。
日本が不況から脱却できていない時期であったことを考えますと、世界恐慌からの景気回復には随分と差があったことがわかりますが、そういう時代に起こったのが「米国の利上げ」だったわけです。
そういう意味では1937年は米国の今に似ているだけで、日本にとってはまったく現状とかけ離れた経済・社会状況であったことがわかります。
FRBが利上げに動いて大失敗した記録的な年こそが1937年
この1937年という年は、米国金融当局の継続的な「金融緩和」の成果もあって米国経済がいち早く回復し、「FRB」が利上げに動いた年であったわけです。
しかしながらその結果、「国債」はほどなくして大幅に売られ金利は逆に上昇、株価は1937年3月高値「194ドル」から1938年3月にかけて「50%以上急落」しました。
1937年高値の「194ドル」を回復したのは1945年12月8日のことで、相場回復に8年の歳月を費やすことになってしまったのです。
しかもこの時期は「第二次世界大戦」まで勃発するという不幸な時期にあたっており、米国ではある意味で非常に嫌気される年代の話でもあるのです。
量的緩和後の引き締めは経済に大きな影響を与えるという大教訓
1937年が今の米国とどれだけ似ているかは、人によって捉え方もまちまちであろうかと思いますが、ひとつだけ言えることは長年続いた「金融緩和」の蛇口を閉めるというのには、かなりのリスクが伴うということです。
1937年の「FRB」は安易に利上げによる量的引き締め(QT)を行ってしまったが故に、その後の回復までに8年もの時間を費やすことを余儀なくされていますが、「リーマンショック」以降3回にも及ぶ資本主義市場例を見ないほどの「量的金融緩和」と「ゼロ金利」は、よくも悪くも金融相場に大きな影響をもたらしてしまっております。
たった一回0.25%の利上げがスタートし、しかも市場からはまだ資金の引き上げを一切行っていないだけでも市場が変調をきたそうとしていることだけは間違いのない状況で、2016年の今は「FRB」がこのまま利上げを継続するのか一旦方向転換を決意するのかの重要な局面に差しかかってきているのです。
1937年再来を唱えるレイダリオは評論家ではなく世界最大のヘッジファンドCEO
昨年の春先世界最大の「ヘッジファンド」である「ブリッジウォーターアソシエイツのCEO」である、「レイ・ダリオ」が1937年が今と似ていると言い出していますが、彼はまさにグローバルマクロファンドの中心的存在であり、単なるエコノミストやアナリストの評論としてこうしたことを口にしているわけではないところが非常に気になります。
1975年に設立されたブリッジウォーター・ピュア・アルファ・ファンドが稼いだ累積利益は絶対額で450億ドル(約5兆3200億円)に達しており、73年設立でソロス氏の傘下にあるクオンタム・エンドウメント・ファンドは428億ドルを超えるまでになりました。
しかし市場に警鐘を鳴らし続け、もっとも今の相場状況に精通しているはずの「レイ・ダリオ」でさえ、昨年8月には損失を被っている事を考えると、いかに今の金融相場が難しいかがよく理解できます。
「レイ・ダリオ」の度重なる指摘がどこまで正しいのかは後になってみればよくわかるはずですが、「FRB」が2015年12月に利上げを行ってから、金融市場が変調をきたしていることだけは事実であり、この状況に変化を加えられるのは中国でも「原油価格」でもなく「FRB」自身の政策判断なのではないかという色彩がよりいっそう濃くなってきている状況です。
3月に「FRB」が利上げするのかどうかに注目が集まっていますが、このまま利上げが粛々と続いた場合さらに市場は荒れることが想定され、為替相場もそれに応じて荒れたものになることはほぼ間違いなく、相場からは目が話せない時間が続きそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)