このまま粛々と米国だけが利上げを断行した場合、世界経済に与える影響は中国経済の不調をはるかに超えるというネガティブな見解も登場しつつあり、米国の利上げの是非が相場下落の最大の元凶として市場でも強く問われるようになってきています。
元ダラス連銀総裁のリチャード・フィッシャーは痛烈にFRBを批判
2015年3月までダラス連銀の総裁をしていた「リチャード・フィッシャー氏」はもともとブラウン・ブラザーズ・ハリマンで債券や外国為替部門で活躍した相場に精通した人物です。
先ごろCNBCのインタビューにおいて、
「市場を不安定にしている元凶は中国ではなくFRBである。FRBはこれまでさんざん相場を吊り上げてきたが、今やその後始末に困っている。FRBは市場を操作する兵器を持っているが、その兵器には、もう弾が残っていない」と述べて市場から大注目となっています。
フィッシャー副議長のKY発言も市場で大きく嫌気される要因に
しかしリチャード・フィッシャー氏の辛らつな発言とは裏腹に、「FOMC」の影の議長といわれるもう一人のフィッシャー、スタンレーフィシャー副議長は年初の「CNBC」のインタビューに対して、
「市場には、利上げは2回との思惑も根強く残っているが、少なすぎる、市場は今後の進展を過小評価している」、「「個人的に4回の利上げを実施するというのは大まかな見積もりの範囲内だ」と述べ、さらに追加利上げを推進していく意欲をみせ市場を驚かせることとなりました。
株も為替も大幅に下落し、もはや暴落かと思わせるようなリスク回避相場の真っ最中にこうしたKY発言が飛び出したことから、市場は大きく動揺しリスク資産売りに拍車がかかることとなってしまいました。
その後、「FOMC」のほかのメンバーが必死にフォローする発言を繰り返していますが、もはや世界的に市場は「FRB」の利上げが中国経済や原油市場を越えるほど、大きなリスクとして認識されるようになってしまいました。
歴代FRB議長と同じくイエレン議長も追加利上げで市場の洗礼を受けるのか?
FRB議長はグリーンスパン、バーナンキなど各議長ともに就任後大きな相場の下落に直面するなど危機的な金融状況の洗礼を受けてきたという経緯があります。
しかし、「イエレン議長」に関してはまだこうした経験を一切受けていないまま1年近くが経過することとなってしまっています。
3月に当初の予定通り追加利上げを行い、しかも年間1%程度の利上げを目論んだ場合、新興市場が破綻するなどの本格的にネガティブな影響がでることはほぼ間違いない状況であり、利上げを修正して乗り切るのかそのまま突っ込んで手痛いダメージを受けることになるのか、この3月の「FOMC」がきわめて重要な局面にさしかかってきているといえるのです。
(この記事を書いた人:今市太郎)