8日に発表された米12月「雇用統計」では、「失業率」が5.0%と予想や前回と一致しましたが、平均時給は前月から横ばいにとどまりました。ただ「非農業部門雇用者数(NFP)」は+29.2万人と市場予想を大きく上回り、過去2カ月分も上方修正されました。
通常であればこれだけの数字がでれば再利上げの可能性が高まるためドル円は上昇するはずでしたが、市場の動きはまったく逆で結局その後ドル円はずるずると下落し117円台半ばまで下押しすることとなり、欧米の「経済指標」に市場が関心を示さない結果になってしまいました。
いったい市場に何が起こっているのか再度検証してみます。
年初、ヘッジファンド勢はまだ仕掛け売買をしていない
年明けからいきなりこれだけ「ボラティリティ」の高い相場が毎日展開されるとなると、誰かが仕掛け売りをしているのではないかと勘ぐりたくもなります。
しかし、実際には年明けからは主要な「ヘッジファンド」も一切特別な仕掛け売りをしているわけではなく、ほとんどが様子見の状況となっているようです。
市場参加者の少ない相場のなかで流動性を欠きながら、一方向に動く相場が継続していることがうかがわれます。
ただし年末に閉鎖となったファンドの売り物や債券の売り物などは年明けから粛々と処分されていることは間違いないようで、こうした動きが市場で顕在化しているという見方も強まっています。
ドル円は日に何度も1円幅で上下
直近1月7日と8日のドル円の動きをみても、118円台中盤と117円台前半を何度も往復していることが下記のチャートからわかります。
また、日本時間の午前10時15分の「中国人民銀行」の対ドル基本レートの発表に異常に神経質に反応するようになり、8日の場合もたった10ポイント元高に振れただけで117.500円の底値から1円暴騰する動きが見られました。
正直なところ、この動きでは買い持ちしても売りもちしても相場の乱高下で必ず「ストップロス」をつけさせられることは間違いなく、高値で売り続けては底値で利確してまた様子を見るといった方法でもとらない限りは、必ずやられて損失を被る相場になってしまっています。
特に「人民元」の動きと逐一ドル円が反応する相場状況はかなりの苦痛を伴うこととなっています。
これが「株式市場」も連動して動いているわけですから、多くのトレーダーが、かなり売買手法で手詰まり感を感じているはずです。
中国上海の「株式市場」には機関投資家が存在しておらず、ほとんどが個人投資家によって構成され、株価が上がれば殺到してついて行き、下がればみなで売り浴びせるを繰り返していますので、通常の先進国の市場が7%下落するのとはわけが違う相場になっております。
この動きに連動して日本の株や円が上下するのは非常に難しく、むしろ東京時間帯では為替の取引をしない方がリスクが少なくて済みそうな状況にもなってきています。
しかもこうした相場展開は週明け以降も延々と続きそうな気配で、オシレーター系のテクニカルツールも歯が立たないのが実情です。
間違ったと思ったら即撤退で対応しかないか?
この相場状況ですから、一旦恐がると「ポジション」を作ることができなくなってしまいます。
あるいは極端に証拠金に厚みを増して、簡単には「損切り」にひっかからないようにする以外には手がないといえます。
FRBは1937年と同様の株価暴落のボタンを押してしまった可能性も
こうしてみてきますと、やはり気になるのは年末の「FRB」の利上げは本当に正しかったのかどうか?という問題に行き着きます。
歴史を振り返ると、1937年は大暴落からかなり景気も回復し、2015年よりもはるかに景気の状況はよかったのですが、それでも利上げで株価は5割下落し、その後もとのレベルに回復するためにはなんと8年の時間が必要となり、大きな戦争にも突入しています。
結果はもう少し時間が経たないとわかりませんが、もしかすると同じ過ちのボタンをすでに押してしまった可能性も高くなってきているようです。
流れの変化を見極められるまで取引をしないか、とにかく果敢に参戦するか、年明けからいきなり投資家の良識と判断が求められる時間帯にさしかかってきているようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)