「FOMC」を前に乱高下を繰り返したドル円を中心とする為替市場の傍で、14日債券市場には大きな衝撃が走りました。
米サード・アベニュー・マネジメントによる高利回りファンドの償還凍結(解約停止)に加え、英ルシダス・キャピタル・パートナーズによる全「ポートフォリオ」の清算を受け、14日のクレジット市場では一段の損失への懸念が広がり、債券リスクが世界的に急上昇することとなりました。
サード・アベニューは運用資産額7億8850万ドルの社債ミューチュアルファンドを清算し、損失の拡大を避けるために投資家への資金の分配を遅らせると先週発表。
またストーン・ライオン・キャピタル・パートナーズも顧客の解約請求が殺到したことで、運用資産額4億ドルのクレジット「ヘッジファンド」の換金を停止する事態に追い込まれています。
今のところ名前も知られていない小さな会社の2社に限定された事態なので、大勢に影響なしということから日本のメディアでもほとんど報道されていません。
しかし、思い起こせば2007年のときもパリバショックから本格的に債券の解約停止が進み、「サブプライムローン」イシューへと進展していった経緯があり、それを知る業界関係者はいよいよ債券市場の崩壊がはじまりつつあるのではないか・・とかなり戦慄の時を過ごすこととなっているのです。
ゴキブリは一匹ではないと警鐘を鳴らすジェフリーガンドラック
新債券王の異名をもつダブルラインキャピタCEOの「ジェフリー・ガンドラック」はブルームバーグからの電話取材に対し、
「どれだけ多くの「ヘッジファンド」が破綻するかが大きな問題になる。ゴキブリが一匹だったためしはない」と率直に警鐘を鳴らしており、市場ではまだまだ債券ファンドの凍結が続く可能性を示唆している状況です。
現状では各社に解約申し込みが殺到している段階で、結果はまだわかりませんし、幸か不幸か「クリスマス休暇」に突入して一旦休戦という形になっていますが、深刻な影響がではじめるのは年明けすぐとの味方が強く、年初はジャンク債相場の破綻からほかの金融商品にネガティブな影響が波及する可能性が高まっているともいえます。
こうした小さなファンドから波紋が広がり大きな津波のような形で市場を襲うことになった2007年は市場関係者の記憶にも新しく、奇しくも「FRB」の利上げタイミングにも合致している点で、こうした動きが出始めていることを危惧する関係者は増加中です。
12月に入ってからは市場のバーゲニングパワーが相場を大きく上げ下げするようになっていますから、この動きが加速すれば必ず大きな影響がでることは間違いないものと見られます。
株式相場だけが平静を装う展開に
いみじくも前出の「ジェフリー・ガンドラック」が指摘していますが、ジャンク債市場が危機的状況にあるのに「株式市場」はそれを意に介さず平静を装っているのは2007年によく似ており、きわめておかしな状況です。
「FOMC」後も株価は下がらずに一定の軟着陸がはかられたことになっていますが、問題が起きるのはいよいよこれからということになりそうです。
炭鉱のカナリア iシェアーズのハイイールドボンドETFはすでに下抜け
このコラムでも何回かご紹介しているように「炭鉱のカナリア」と呼ばれてリスクのベンチマークに利用されてきたiシェアーズの「ハイイールド」ボンド「ETF」は重要な水準を下抜けてしまい、一旦下げ止まっていますが、下げはまだ甘く、これ以上の下落は十分にその余地を残した状況となってしまっています。
年末はともかくも年初早々から「ジャンク債市場」初での大混乱から株価大幅下落、為替暴落とリスク回避への動きが加速する可能性が日に日に高まっているといえます。
(この記事を書いた人:今市太郎)