FX市場ではトレーダーのお祭り騒ぎ的要素の極めて強い米国の「雇用統計」ですが、イエレンダッシュボードはより多くの指標を織り込むことを基本似ているものの、市場の最大の注目点はNFP,つまり「非農業者部門」の雇用者数と「失業率」に集まることになります。
しかし、この結果は毎回市場の予想と大きく食い違うことになり、まともに当たるアナリストがほとんど存在しないのが実情となっています。
ほとんどの予想者は毎月それを専門にやっており、経済に対する知見も一定以上のものを保有した上で予想しているにもかかわらずまったく当たらずに上下に推移するのがこのNFPの結果です。
確かにそれがFXトレードのお祭りとしては面白いという意見もありますが、大の大人が雁首をそろえて分析してまったく当たらないとか大きなブレがでたり、翌月また大きく修正したりするのは「雇用統計」の精度自体がおかしいのではないかとの指摘も強くなってきている今日この頃です。
12月の「FOMC」前の最後の「雇用統計」が4日の日本時間夜10時半に発表となる「雇用統計」で、よほど悪い数字がでない限り利上げは想定内とされていますが、11月に発表された数字が大きく修正されるのではないかといった憶測も高まりつつあり、意外な波乱要因になる可能性もでてきています。その「雇用統計」の仕組みについて考えてみました。
※雇用統計これまでのNFP推移
NFPと失業率の調査はまったくの別物
まず、失業率の調査については、毎月12日を含む週における状況を調査しており、全米の約6万世帯を調査対象として失業者数を推定しているものとなります。
一方、「非農業者部門雇用者数」は非農業者部門に属する事業所40万社に所属する約4700万人を対象として給与支払帳簿をもとにして集計しています。
これは全米の事業所3割程度を網羅しており、網羅性という点では高いものの、全米の事業所に一斉に調査票を郵便で送付して、翌月までに戻ってきた結果を利用して速報値を算出しているため、遅延した調査結果を集計するので翌月以降になるため、事後の変動が大きくなるのが通例で、毎回速報値のあとの改定値が驚くほど異なることになるというわけです。
40万社のうち非常に雇用に積極的だった企業が先行して回答してきてしまい、それをベースにして速報予測を発表してしまうから毎回大きなブレがでることになるというわけです。
しかもNFPが極端に良くても悪くても失業率となんら連携性がないのは調査対象がまったく別だからで、しかも完全失業率達成が囁かれていますが、一定期間失業して仕事を探さなくなると失業者のカウントからはずされているのが実態ですから、失業の現実とこの数値が乖離しているとの指摘も強まっています。
11月発表分が大幅修正になるのではという見方も登場
11月に発表された10月の雇用統計は大方の予想である18万人程度を大幅に上回り27.1万人という驚くべき良好な数字となったのは記憶に新しいところですが、専門家からはADPの数字などともあまりにも差がありすぎ、実際数字は今月大幅修正されるのではないかとの予測が出始めています。
つまり12月発表分は予想以上に下落する可能性もあり、しかも前月もし下方修正されることで既に8割近くまで織り込まれつつある市場の12月「FRB」利上げ観測を冷やすような波乱要因になる可能性も出てきているのです。
まあ毎月の予測も満足に当たらないわけでですから下方修正の予測だけが当たるとは思えませんが、冷静に見てもこの数字はおかしいとの指摘がかなり高まっていることは事実です。
ここまで市場が利上げを織り込んでいるのにいまさら辞められないという見方も強いものの、やるやると言いながらとうとう年末まで引っ張ってきた話ですから不安要素が浮上すればいつ見送りになっても不思議ではないのが今の「FOMC」の状況といえます。
ISISによるパリのテロよりもその後に起きたトルコによるロシア空軍機の撃墜の話のほうが地政学的リスクが大きくなりかかっていることなどを見ても、ここ2~3週間でまったく想定していなかった番狂わせが登場する可能性もあります。
「FOMC」に向けて、ポジションを仕込むにしても、状況の変化にあわせて枚数を減らすなど常に市場に対応できるようにしておくことが重要になりそうな2015年末です。
(この記事を書いた人:今市太郎)