パリの無差別テロから週が開け、市場は大きく荒れるのではないかと予想されましたが、意外に冷静で、株も為替も大きな下落を示現せずに落ち着きを取り戻しています。
グレンコアが破綻すれば米国利上げを超える大打撃か?
「投機筋」が嫌がっているのはこのまま「WTI」原油が30ドル台で底割れを示現するようなことがあれば、一旦は破綻の危機をまぬがれたスイスの資源大手グレンコアが正式破綻に追い込まれるのではないかということです。
いつどこで起こるかわからないテロの恐怖よりも「原油価格」とグレンコアの破綻のほうが、より可視化されている危機と捉えられているようです。
有利子負債は日本円で3兆2千億円超
このグレンコアという会社は日本では初耳のトレーダーも多いことと思います。
グレンコア・エクストラータが正式名称で、鉱山開発および商品取引を商売にしています。2013年の売上高は約2327億ドルで、スイス・バーゼルに本社を構える会社ですが、9月28日に株価が29%も下落し、それを受けてダウ工業株30種平均が前週末比で312ドル下落したのは記憶に新しいところです。
銅の世界取引の5割に関与しているグレンコアは、銅の先物価格の下落により苦境に陥ったとされていますが、実はその後も同社が手掛けている石油デリバティブ業務に大きな損失がでているのではないかとの噂が絶えない状況なのです。
このグレンコアは世界の石油取引のほぼ3%に関与しているとされており、「原油価格」の下落は致命的な状況に陥るとの見方は非常に強くなっています。
デリバティブに大失敗した会社としては、有名なのが粉飾決算で米国において大問題となったエンロンであり、米国市場ではこれを文字ってグレンコアのことをグレンロンと呼ぶ向きも登場するほど破綻を心配する状況に陥っているのです。
グレンコア破綻ならエネルギー系ジャンク債の多くがデフォルト
さらに嫌なのは破綻の連鎖であり、今でもかなりリスクの高まっている「シェールガス」関連の「ハイイールドボンド(ジャンク債)」が連鎖的に破綻する可能性もでてくることから、年末に向けても「FOMC「のみならず「原油価格」動向から目が離せない状況になりつつあります。
一説にはこれが引き金になって第二の「リーマンショック」がやってくるのではないかとの説も日増しに濃厚になっており、ピンチはチャンスのはずの多くの「ヘッジファンド勢」がこの動きを嫌気しているというのはなんとも気になるところです。
実際「ハイイールド」ボンド「ETF」の価格は「FOMC」が9月に利上げをしなかったことで回復したにもかかわらず8月24日の中国起因の株価暴落時の価格に近づく動きをみせはじめており、年内になにか起こらないか関係者が非常に肝を冷やす状況が継続しているといわれます。
こうしたテールリスクはその存在が見えていてもどこで破裂するかわからないだけに実に不気味ですが、米国の利上げがなにかの合図になった場合、いきなり暴落の引き金が引かれる可能性もあり、年末にかけては気にかけておきたいリスクのひとつになりつつあります。
心配が単なる取り越し苦労であることを信じたいところですが、今年これだけ儲かっていないファンド勢が撤退をしはじめたらなにかが起こる可能性がかなり高くなるのかもしれません。
どういうわけか国内ではこうした報道はまったくと言っていいほど外側にでてこない状況で、以前にもこのコラムで書いておりますように「炭鉱のカナリア」としての存在になっている「ハイイールド債」の「ETF」が変調をきたしたときにはすばやく市場から撤退して資金を逃がすことを考えたほうがよさそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)