週明けの為替市場はフランスのテロの影響を受けてリスクオフによる円買い、ユーロ売りが加速するかと思われましたが、実際のところはほとんど影響なく、月曜に発表された7-9月期の国内総生産(GDP)は前期比年率0.8%減と、2四半期連続のマイナス成長となったことのほうが為替に大きく影響を与えることとなりました。
市場では「日銀」が前倒しで追加緩和を行うのではないかという期待と、その期待に乗じた年末の相場買い上げが交じり合ってさしたる理由もないままにドル円は123円台を回復しました。
しかし相場の期待とは裏腹に日銀が追加緩和を即座に実行するとは思えない状況で、今週の「日銀」の政策決定会合後何も発表されないと円は大きく買い戻されて下落する可能性がでてきています。
国債はもはや買えない状態
そもそも「日銀」が2年半以上行ってきている量的質的緩和は株の価格を押し上げたまま買い支えることには効果があり、自ら円の価格を切り下げることで円安も継続させることには成功しています。
すでにこれ以上の国債の買取は事実上難しい状態で「ETF」の買い入れ資金だけ増やして株価を下げないようにしても、個人消費を伸ばすドライバーにはならず、消費が伸びないから投資も起こらないという悪循環を切り崩す決定的な施策が枯渇していることを示唆する状態となっています。
日銀の最大の目標は金利を上げないことで、金融緩和自体はやめられない
既に「国債」の発行額は1050兆円を上回っていますから、日本の最大のアキレス腱は金利上昇の局面ということになります。
「名目金利」を2%程度に上げるために小手先の政策を打ちだしているうちは問題ありませんが、これが止められない「インフレ」を引き起こすことになれば金利は上昇し「国債」の利払いだけで税収は吹っ飛ぶことになります。
日銀はなんとしても金利上昇を食い止める必要があり、名目物価2%の大義名分のもとに「金融緩和」を続けるのは実に都合のいい口実になっているといえます。
また直近では「QE」の賞味期限がどんどん短くなってきていますから、今追加措置を発表しても年内までその効果は持たず、実際に国民の可処分所得を押し上げることにつながらないだけに「GDP」を引き上げる効果は薄く、今回「日銀」だけが「金融政策」でなんとかする可能性は極めて薄いといえます。
追加がなければFOMC前に一旦大幅下落で調整か
121円を割るほどになれば大きく流れが変わるため、そこまでのことは考えられませんが、122円割れの11月7日の「雇用統計前」の水準まで戻す可能性はありそうで、一旦落としてサンクスギビング後に買い上げるとすれば「FOMC」までのシナリオの整合性はかなり高くなりそうです。
「GDP」の数値は厳しいものの株価が1万9500円超の状況にドル円123円で「日銀」が何かする可能性は限りなくないと見て間違いはないでしょう。「ヘッジファンド勢」もそれをわかっていてあえて買い上げているような印象が強い相場状況です。
(この記事を書いた人:今市太郎)