米国ではジャンク債つまり「ハイイールド債ETF」の価格の推移というのは、相場の大幅下落を占う意味で、「炭鉱のカナリア」と呼ばれるものになっています。
9月の「FOMC」の利上げ見送り「ECB」の追加緩和意向、そして「中国の利下げ」などが立て続けに起こったことからなんとか継続した大幅下落を免れることとなっており、市場関係者は胸をなでおろす状況で一息ついているようです。
炭鉱のカナリアとは?
FX相場ではよく外国人投資家を中心にして使われる言葉ですが、相場の危機が迫っていることを知らせる前兆のことをこういいます。
石炭などを掘り出す炭鉱では掘り進んでいくうちに有毒ガスが噴出して命を奪われることになるため、坑内にカナリアを持っていき、様子がおかしくならないかチェックするというところからきた言葉です。
直近の米国の金融市場では売りが出ると誰も買い手がつかなく、とめどもなく下落するジャンク債ETFの相場がこれにあたるとされてきたわけです。
ブルームバーグが提供しているHYG,USiシェアーズETFのチャートを見ますと、10月の頭に思い切り落ち込んで真っ逆さまに下落しそうになりましたが、なんとか持ち直しました。
年末までは少なくとも利上げなしに加え、QE4再開の可能性も市場で囁かれ始めていることから、行き場を失った資金が再度リスクオンのセンチメントで買い戻しをかけてきていることがわかります。
「8月24日に大暴落」を起こした市場では二番底がやってくるのではないかとかなり警戒されたわけですが、一旦はそのリスクも後退しているといえそうです。
しかしすべては「FOMC」待ちの部分が大きいわけですから、10月の利上げがなくてもまた12月にこのネガティブなお祭り騒ぎの洗礼を受けることになるのは言うまでもありません。
ドル円は200日MAを底抜けたものの20ヶ月MAより上でまだ上昇の可能性
「ECBドラギマジック」のおかげで「オーバーシュート」気味に121円中盤まで買いあがってしまったドル円は所在ない動きになってしまい、月末の重要イベント前にへたり気味ですが、依然として下値は底堅く、再度上を狙いにいく可能性もでてきています。
「投機筋」ではドル円はいまも20ヶ月MA,つまり500日移動平均線、直近では114円台初頭よりも相場が上に持ち直していることから、このまま闇雲に下落することはないのではないかとの見方を強めているようです。
この20ヶ月移動平均線を下回ってしまいますと、とどのつまりが「アベノミクス」で上げた世界のコストがほとんどもとに戻る世界になってしまうため、非常に重要な線になっているというわけです。
しかし高値から見ると随分と戻ってきた感じもあったのが118円ですから、下押しするとこのサポートラインも危なくなってくる可能性はまだ残されており、手放しで安心できるとはいえません。
いずれにしても仕掛け売りをかましてくる「投機筋」がいったいどのラインを目安に売りや買いをしかけているのか把握しておくことは悪いことではありません。
テクニカルツールもさらに使い勝手がよくなるというもので、ドル円も底抜けがないかぎり例年どおり年末に向けては上方向をたどる可能性が高くなりそうです。
市場はやはり下方向をきにしている
冒頭の「炭鉱のカナリア」の話といい、ドル円が20ヶ月移動平均よりも上にある話といい、その根底にあるのはなんとなく大きく相場が下落するのではないかという市場の疑心暗鬼の表れであるといえそうで、多くの市場関係者が不穏な動きを気にしながら相場に向き合っていることがわかります。
ひとたび有毒ガスが噴出せば、カナリアがおかしくなったのと同時にこちらもやられてしまうことがあるわけですから・・絶対安心とは言えないわけで、やはり気にするなら下方向をつねに意識しつづけることが重要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)