11/16の日本時間午後10時半に発表された米国の雇用統計は「非農業部門雇用者数」が前月から+271千人と大幅に増加し「失業率」は前月から▲0.1%ポイント低下して5.0%を記録することとなりました。
大方の予想が18万人程度ですから、かなり急激に改善したことを示していますし「失業率」も事実上完全雇用に近い水準に戻っており「リーマンショック危機」以降でもこれだけの数字がでているのは今回が始めてという水準にまで下落しています。
これを受けて市場ではいよいよ「イエレン議長」の予告どおり12月には利上げが行われるものと見込んで相場が動き始めています。
チャートを見るとドル円は上方向をやりたくて仕方ないセンチメントが見える
どうもドル円は上方向、ユーロドルは下方向に猛烈に動かしたいと思っている市場の思惑が相場のチャートからも見て取れます。
すでにドル円は123.26円レベルまで上昇し、123円台で週末を迎えていますので、火曜日以降毎回のNFP後のドル円上昇の動きのように下落に転じていかない限り、つまり122円台を死守できれば上方向へのトライの可能性が高まることになりそうです。
ただし、12月の利上げ予想という材料だけでは今年の黒田ラインの125円を簡単に飛び越えて新値をつけにいくとも思えませんので、一定の上昇で利益がでたら、あまり欲張らずにしっかり実現益にかえておくといった緻密な売買が求められそうです。
さらにユーロの下落でユーロ円をはじめとするクロス円は総じて大きく下落していることから、クロス円がドル円の上昇を阻む可能性もあり、一方向に大きく動くかどうかはまだよくわからない状態です。
さらに標準偏差ボラティリティで見ますと、ドル円にはトレンドがではじめそうな雰囲気もありますが、現状で上方向の明確なトレンドが形成されているわけでもないところが気になります。
一方ユーロドルは「ECB」の追加緩和期待をバックに大きく売り込まれており11月6日のNFP発表直後に1.07円を割れるところまで突っ込んでいます。戻りも1.075レベルにとどまっており、こちらのほうは明確にユーロ安トレンドがでているため安易な逆張りは危険な状況です。
但し、市場が一方向にだけ傾いていますと12月の「ECB」理事会の前に一旦大きくショートカバーが出る可能性もあるので要注意です。
NFPは追い風とはいえ本当に米国は利上げするのか?
クリントン政権の財務長官であった「ローレンス・サマーズ」はこの間一貫して米国の利上げに反対していますが、そのサマーズは利上げがあるとしても「CME」のFedウオッチの数字が70を超えない限り難しいだろうと語っています。
その「CME」のFedウオッチは6日の雇用統計の結果を受けて69.8%とほぼ70%に到達するとこまで来ており、かなり市場が12月利上げを織り込んでいることがわかります。
ドル高で株高という典型的バブル状態を示現する米国金融相場
国内は郵政3社の上場で浮かれ相場になっており、今のところ資金吸い上げによる下落は見られていませんが、米国も「NYダウ」や「ナスダック」は年末に向けて相場を大きく戻してきており、すでに利上げ報道がでても下押しすらしなくなりつつあります。
一方ドル円も米系のグローバル企業の収益には影響がでるといわれながら、またしてもドル高傾向に拍車がかかる状況となってきており、典型的なバブル相場が展開されつつあります。
しかし「イエレン議長」が12月16日の利上げを決めた段階で材料出つくしから一気に株も為替も売り込まれると見ている「投機筋」も多いようで、ハロウィンエフェクトで来年の4月ごろまで一本調子に上昇するほど話は簡単ではなくなっているようです。
こうしたバブル的な動きの背景には、このコラムでも何回か触れているように「ヘッジファンド」も商業銀行もまったく儲かっていない2015年の金融相場の状況が背景にあります。
年末の利上げがあるかどうかを決める前まで、買い上げて売り逃げしようとする向きの多さが自然と相場を上昇させている可能性が高くなっていますので、あまりこだわって持ち続けずに適当に利益が確保できたところで売り抜けるという早回転が必要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)