12月先進各国の「中央銀行」が順次発表した政策決定をめぐって相場は大きく揺れ動く展開となりましたが、中でもノーマークであった「日銀」の言ってみれば、ほとんどどうでもいい決定内容が今回の相場でもっとも大きな市場の反応を招くことになってしまいました。
1.J-REITの銘柄ごとの買入上限を拡大
2.「ETF」買い入れ額を3000億円新たに追加
3.買い入れ「国債」平均残存期間を来年から7−12年に延長
という内容はどれも目新しいものではなく、追加緩和という言葉を使うにはそぐわないものでしたが、アルゴリズムが大きく反応したことから壊滅的な相場展開を示現することとなってしまいました。
ドル円、株価支援のはずがとんだ自爆テロであり、焼け野原になったのは味方の相場ばかりという恐るべき展開となったわけです。
配慮を欠く英文のリリースが引き金
多くのトレーダーの方はご存知のとおり、最近のアルゴリズムはニュースヘッドラインやニュースレリースのテキストを読んでキーワードがあれば反応する仕組みを持っています。
したがって今回の「日銀」の発表も内容を読めばすぐにろくなものでないのがわかるにも係わらず、アルゴリズムに対する対応を怠った英文対応で「QE」やEasingという言葉を散りばめた為、いきなり相場は株も為替も吹き上がることとなりました。
しかし有人で内容がチェックされると当然失望売りになり、逆に大きく売られることとなってしまったのです。たちが悪いのは一旦買い上げて、そのあと大幅下落したことです。
売りも買いもどちらのトレーダーの「ストップロス」をも巻き込んでしまったことで、NY市場の終値ベースでみるとドル円が上昇1円、下落2円30銭程度と「ECB」決定後のウルトラショートカバーに負けないほどの乱高下となってしまったわけです。
また「日経平均」も600円上昇後の大幅下落でNY市場の先物の終値はすでに1万8800円を切れる水準まで落ち込むこととなりました。
往復でいえば1800円ほどであり、週明けにさらに下落が続けばその被害はより拡大することになってしまいます。この日のドル円の15分足足を見ますといかに相場が劣悪であったかが理解できます。
12月相場の勝者は何もしなかった人だけ
結果論からいいますと、「今月の最大の勝者は何も相場をやらずに静観していたトレーダー」ということになります。
まったく不条理な結果ではありますが、とくにドル円は上げ下げを繰り返し122円台で終わるかと思いきや121円台初頭まで戻されているわけですから、この間の上げ下げにすべてついて行けて利益がでたトレーダー以外はかなりの損失を抱えることになってしまったのではないでしょうか。
毎回5%の損切りができたとしても往復で6回程度あった乱高下できらされてしまった場合には、原資の3割以上を失ったトレーダーも多いはずです。
それも狭い「ストップロス」が入っていればの話であり、かなり幅を見て損切りポイントを設定した場合には短期的にもっと大きな損失を計上した方も多いはずです。
事前予測はほとんど意味がない
長年債券王と呼ばれた「ビル・グロス」は今年5月ごろから見事に市場の動きを当てましたが、にもかかららず自社の収益はマイナスになり、資金運用を託したとされた「ウォーレン・バフェット」も早々とその資金を引き上げてしまいました。
この状況を見ても判るとおり、市場が読み取れても乱高下するミクロの相場で勝てるわけではないのです。しかもテクニカル的には底値を見極めることはできてもこうした人為的な市場形成にはテクニカルツールは無力です。
テクニカルベースで確実に利益を上げるならこうしたイベントドリブンな市場には参加せずに「レンジ相場」を黙々と刈り取るほうがよほど安全で利ののるやり方になるのかもしれないことを今回改めて痛感させられました。
お祭り的イベントで参加することに意味を見出さない限り、実に後味の悪いものとなったのが今回の12月相場といえそうです。
すでに市場は「クリスマス休暇」入りしていますが、28日以降またあらたな動きが出そうですので、気を引き締めて対応したいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)