年末に入ってから「原油価格」の下落が為替にも色濃く影響を与えるようになってきています。特に「WTI」の原油先物価格は米国の「株式市場」に大きな影響を与えており、為替の売買のために「原油価格」の推移にまで目を行きとどかさなくてはならなくなっている状況にあるのです。
すでに北海ブレントなどは最安値を更新中であり、年末は「クリスマス休暇」で一息ついていてもこの先はどうなるのかが非常に不透明になりつつあります。
シェールガスの発掘が原油を投機から実需主体に変化させる要因に
もともと原油は「投機筋」のもっとも好む商品として長年機能してきました。
結果として原油はまさに需給バランスだけで価格が推移することになってしまい、しかも産油国のどこも減産をしないという異常事態の中で、供給過剰と市場での在庫量が価格の下落に拍車をかけることになってしまっているといえるのです。
この状況はまだ当分続きそうで、価格が簡単に50ドルから60ドル方向に戻るのはかなり難しいのが現状となっています。
直近のWTI相場は34ドル割れで30ドル下抜けも時間の問題か
テクニカルチャート的には34ドルというのはかなり底をつけており、そろそろ反転してもおかしくないレベルといわれます。
しかし、今回の下落はファンドなどの「投機筋」が無理やり売り浴びせをしているとも言われており、人為的に作り出された相場であるだけに、このまま簡単に価格が戻る状況にはないのが現実です。
「WTI」の「原油価格」はぎりぎり34ドルのところで踏みとどまって「クリスマス休暇」に入る形となりましたが、問題はクリスマス明けで、米国議会が原油の輸出再開法案を可決したこともあってさらに市場に原油在庫が増加することが懸念されはじめています。
こうなると世界規模での我慢比べの様相を呈することになり、とにかく市場プレーヤーが減少するまで一定の叩きあいが続くことが予想されます。
原油価格の下落は波状的なリスクの拡大に
「原油価格」の下落自身が株や為替に直接的に大きな影響を与えることは間違いありませんが、市場ではさらにネガティブな波及効果が広がりつつあります。
ひとつはエネルギー系のジャンク債の「デフォルト」と解約騒ぎの拡大であり、クリスマス前の解約騒ぎは結果として年明けにその結果がはっきりしてくることから、多数のファンドが解約停止に追い込まれれば、ジャンク債全体に大きな影響を与えることは必至とみられます。
当然これまであまり反応しなかった「株式市場」もこれを嫌気することは間違いなく、債券市場にどれだけの影響がでるのかが年初としてはもっとも注目される動きといえます。
これは、関係者によれば2007年の「サブプライムローン」の時の動きによく似ているという話もあり予断を許さない状況になってきています。さらに産油国の投資ファンドが軒並み投資資金を引き上げる動きに出始めているのも気になるところです。
国内ではNY市場の株価が上昇したにもかかわらず「日経平均」が何日も下落を続ける状況が、この12月には見られました。
サウジアラビア通貨庁(SAMA)が国内の個別株投資から撤退し始めているという話がでてきており、投資資金の引き上げによる株価の下落が現実のものになろうとしているのです。
特に日本株へのSAMAの投資は大きいとされており、他国も同様の動きになれば「日経平均」は想像以に下落する可能性もでてきているのす。
いよいよ「デフォルト」の産油国も登場する可能性があります。ベネズエラなどはかなり危機的な状況ですし、ロシアも相当厳しいところにまで追い込まれていると見られています。
このように「原油価格」の下落は二重、三重といった形で金融市場に影響を及ぼすことになるため、相当な注意が必要であることは間違いありません。
まず「CME」の原油先物価格は常にチェックをしながら為替取引をしていくことが年上げにはかなり重要になりそうです。原油を睨みながらの売買はこれまでの為替取引にはなかったものですが、そのぐらい気を使うべきタイミングがこの1月に訪れようとしているのです。
(この記事を書いた人:今市太郎)