2月26日~27日に中国上海で「G20」が開催されたのは皆さんご存知のとおりですが、今になって振り返って見ますとこの「G20」開催後ドルが多くの通貨に対して下落する「ドル安状態が継続」するようになってきています。
実はこの背景に「G20」で、かなりゆるい形でドル安を容認するような「上海合意」なるものが存在しているのではないか?とする報道が浮上して市場で大きな話題になりつつあります。
プラザ合意に似た上海合意の存在
こうした合意が存在するのではないか?といち早く伝えたのがブルームバーグで、18日に、先月の上海での20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議以降の政策当局者の行動を根拠にしています。
同会議では型通りの成長促進の確認だけでなく、公表されていない暗黙の合意がなされた可能性があるとの見方を指摘する記事が掲載されたことから、注目が集まる形となっています。
複数の国際金融アナリストからは、市場介入ではなく適切な「金融政策」行動を通じて、主要通貨に対してドル相場を概ね安定させるという合意が存在するのではないか?というかなり具体的な指摘があり、ドル安を演出することで、中国が闇雲に人民元を下落させないという言質をとりつけたのではないかといった見方も広がりつつあります。
ただし内容は85年の「プラザ合意」的な色彩が強いものの、その中身自体はかなりゆるいもので、強固な内容ではないとする見方も強くなっています。
このような裏合意については当初多くのアナリストが否定的な見解を出していましたが、「FOMC」の超ハト派的な「イエレン議長」の発言などで、徐々に先進主要国が協調行動をとっていることだけは間違いないと見る向きが多くなってきているようです。
これが本当ならばドル円は戻り売り、ユーロドルは底値買いがワーク
85年の「プラザ合意」に似たような「上海合意」があったのかどうかについてはもはや知る由もありませんが、これに順ずる協調行動が各国の金融当局連携のもとに行われているのであれば、「G20」以降の不思議なほどのドル安は納得のいく動きということができます。
ただし日本国内だけに限っていいますと、ドル円も日経平均も米国に比べれば著しく売られていることは事実です。
15日に発表された「CME」の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対米ドル持ち高(ドル円のロング)は売りと買いの差し引きで4万5489枚の買い越しとなりました。
前回の6万4333枚の買い越しから、1万8844枚減少してはいますが、依然ドル円は売り持ちされており、3月17日の110円台半ばまでの下落で、その後どれだけポジションが減ったのかについては来週末を待つことになりますが、多くの投機筋がドル円を下方向で見ていることだけは間違いありません。
ですから、このまま110円台をつけたことで円高が終焉するとは到底思えない状況です。
あくまでこうした見方は、常にテクニカルチャート上で納得のいく裏づけを見出してから売買すべきですが、ドル安という国際的な協調をフィルターにして相場を見てみますと納得のいくことが多い事だけは事実で、ある程度これを織り込みながら相場を見通してみてもよさそうなところに来ています。
基本はドル円は戻り売り主体、ユーロドルは下げたところを丁寧に拾って循環的に利益を確保していくことがワークしそうな相場状況です。
急激な円高は望まないとしても日本政府もドル安をある程度容認か
気になるのは仮に国際的なドル安協調があるとしても、現状で、日本政府がどこまでの「ドル安円高」を容認するかという問題です。
年度末、安倍政権がもっとも気にしているのが、企業決算と「GPIF」の損失レベルの確定ですが、国内の株式投資では価格下落で大きな逆ザヤが生まれております。
さらに海外の債券への投資では円安時に購入したものの為替での逆ザヤがかなり大きくなってきていますから、110円程度は止められないものの、100円に近づいた辺りで政府が動き出すことになるのかが非常に大きな関心事になってきます。
当然のことながら年度末ですから「口先介入」の可能性も高まり、アルゴリズムも介入を装ったような悪戯な動きを始める価格帯になってきています。
一度ポジションを保有したら、そのまま持ちっぱなしというよりは、大きく下げたら一旦利益確定して、また様子を見るといったこまめな売買を心がけることが怪我をしない取引方法になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)