この会議では今話題のパナマ文書問題も話し合われるようですが、それとともにさらに各国に通貨安誘導をしないことをさらに確認していく会議になりそうで、声明の発表がドル円下落の支援材料になることも危惧される状況です。
既にルー財務長官は「これまでの合意に沿って、通貨安競争の回避が重要だと主張する」と記者団に述べており、なんらかの通貨安誘導回避内容がさらに今回の会合の声明にも織り込まれることが確実視されはじめています。
米国は更なるドル安の定着化を狙っている模様
この「G20」にはルー財務長官も出席予定であり、各国通貨当局の通貨安誘導を再度けん制することはほぼ間違いないものと見られます。
米当局が通貨安競争を警戒するのは、ドルの実効レートが依然として高水準にあるためで、現実に企業決算にその影響が明確に出始めていることを強く嫌気していることに起因します。
今年の利上げペースの減速が3月の「FOMC」で明確になって以降、ドル高はかなり修正されつつありますが、その水準は2014年秋に「QE3」を終了した時点と比べて15%ほども高く、さらに安くさせたい狙いがあることは間違いありません。
ドル高は製造業の輸出減と雇用減につながっていることから、大統領選挙年の今年、さらに大きなテーマとなることは間違いなく、円高を何とか阻止したい日本政府の意向とは全く逆さまの状況になりつつあります。
ルー財務長官の発言は中国を意識したものに聞こえますが、実際通貨安については日本もターゲットに入っていることは間違いなく、特にアメリカにとってものを言いやすい日本の存在はかなり微妙といえます。
通貨安競争阻止が再確認されればドル円は更なる下落も
この会議の行方は「投機筋」も見守っていますので、改めて「金融政策」で通貨安にしないということが主要国の確認に盛り込まれた場合、4月28日の「日銀政策決定会合」の内容にも影響を与えかねない状況です。
過去2回に及ぶ「黒田バズーカ」は明らかに円安誘導に寄与しているわけですから、非常にやりにくくなることは間違いありません。
また、スムージングといえども「為替介入」の可能性は絶望的に少なくなりますので、ほとんど日本側の要人の「口先介入」がワークしなくなるのは間違いなく、4月後半に向けて105円台にドル円が下落を進める可能性が高くなってきているといえます。
そもそも日本にとって108円台は円高か?
確かに125円から考えれば既に17円も下落しており、今年に入ってからでも13円以上下落しているわけですから、昨年のように年間で15円弱しかドル円が動かない年と比較すれば、年間変動幅をたった4ヶ月で超えてしまいそうな動きになっていることは間違いありません。
しかし、75円からこの3年間で50円の円安誘導を日銀をはじめとする政府筋主導で画策してきたことは紛れもない事実ですから、ここでの20円程度の調整が、急激な円高といえるのかどうかは結構大きな問題といえます。
中国なども日本の円安政策には大きな影響を受けているだけに、このタイミングでの日本政府の円高主張というは殆どの国で納得されないものになりつつあります。
こうなると100円レベルになっても円高を主張するのはなかなか難しそうで、「G20」が開催されるたびにドル円の支援要素は減少していくことになっってしまいそうです。
これがこの先どこまで戻すことになるのかが選挙を控える政権にとっても市場にとっても大きな注目点となりそうで、4月後半の相場の動きにも今回の「G20」の結果はかなり影響を与えそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)