米国では今週になって地区連銀総裁の講演が相次いでいますが、注目は27日の「イエレン議長」のハーバード大での講演になりつつあります。
強気の地区連銀総裁の発言だけから類推すると6月はもはや規定演技の域に入ってきているように見えますが、今唯一の手がかりとなりつつある「CME」のFedWatchを見ますと依然6月の利上げ実施はかなり難しいことがわかります。
本命はむしろ7月か・・・
地区連銀の「タカ派」総裁の発言で相場が振らされるのもいかがなものかという気がする市場の状況ですが、毎回このコラムでもご紹介しています「CME」が纏めているFedWatchの確率は6月依然33.8%に留まっており、通常7割を超えるといよいよ市場コンセンサスができあがったと判断されるレベルにはまだ程遠いことがわかります。
既に次回「FOMC」まで一ヶ月を切る状態ですから、市場はまだ織り込み済みではないことがはっきりとわかります。クリントン政権時の財務長官を務めた「ローレンス・サマーズ」もこのFedWatchの確率が70%以上にならないかぎり、「FRB」は簡単に利上げには踏み切れないとしており、結構要の指標になっていることがわかります。
一方、7月の確率を見ますとすでに44.8%が0.5%以上の利上げを見込んでおり、さらに0.75%以上の利上げも11.3%と両方足し上げれば55.9%とかなりいい線まできていることがわかります。
恐らく6月「FOMC」直前には6月利上げ確率も50%近くに上昇するものと思われますが、数字の織り込み度からいきますと、7月に譲る可能性のほうが依然として高いことが見て取れるのです。
英国のEU離脱問題に決着がつく前に先行利上げはありえない状況
日本国内では英国のEU離脱をめぐる国民投票は残留優位でこのまま決まりそうに見えていますが、どうやら欧米ではまだそこまで断定はできていないようで、ぎりぎりまで微妙な状況と見ている向きが多くなっているようです。
米国の大統領選挙が近づく秋口は事実上利上げもできなくなりますから、この7月に実施できるかどうかが最大のチャンスといえそうで、6月「FOMC」時に7月を示唆する内容がでれば一気に実現性が高まることになりそうです。
サプライズ主体の運営を行う日銀と異なり、「イエレン議長」は市場とのコンセンサスに異常なほどの神経を使うタイプですから27日の講演でもそれに近いことをまた口にすることになると思われますが、このFedWatchで7割近い確率が出ますと市場の織り込み度は確実なものといえますから、利上げ実施の可能性はかなり高いものになるといえます。
「FRB」が最も気にしているのが株価の動きとされていることから、見てもこうした織り込み度が高まると利上げをしても株価への影響がかなり薄まることから、予想以上にFedWatchの数字の行方が重要になってくるわけです。
新興国市場の相場大幅下落も夏に到来
この利上げ時期はあくまで米国の都合で考えられていますが、この半年利上げがなかったことにより安定が保たれてきた「新興国市場」は株価の下落と資金の海外への逃避、さらにドルの上昇でコスト圧力が再燃する可能性が高まることとなり、特にドル建ての債務コストを押上げることとなることから想像以上にネガティブな影響がでることを考える必要がでてきているのです。
国内の金融機関の試算ではインドと中国だけでもドル建て債務は9兆8000億ドルも抱えており、中国に与える影響も深刻視されはじめています。
不動産バブルの拡大と債券市場の変調だけでも心配な中国にとどめをさす可能性もあり、米国の利上げについては直後の相場の動きのみならず、その後の決定的な問題の発生の有無をしっかり見極めていくことが必要になりそうです。
やはり1937年の再来がどこからともなく迫ってきている印象が抜け切らない相場の現状です。
(この記事を書いた人:今市太郎)